2010-09-28

今週の3分クッキング。

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
-伊豆まよね「純愛姦情」ジーウォーク ISBN:9784862972842
話○-△ 抜○-△ 消小 総合△

もぎたての青い果実から大人のあの女(ひと)までさまざまな形のラヴ・アフェア短編全11本。特異な世界観を構築しながらそのなかで普遍的な愛をささやく「まよねーず。」名義のエキセントリックな芸風から一転しごくオーソドックスな純愛和姦を展開する通算3冊めかつこのペンネームでの初単行本だ。
いまとなってはいささか古典的な部類に属する一般青年誌調の絵柄は率直に言って華やかさには欠け、店頭でのアピール度では見劣りする。のっぺりしたモンゴロイド的体型のボディ描写もまたそうした印象を補強しており、もっちりツヤツヤのおっぱいだとか繊細なトーンワークで浮かび上がる美まんこなどを期待する向きは最初から手に取らないこと。
この一見訴求力の低いタッチでいながら女の子全員肉便器だとか売春がありふれた日常だったりなど一種異様なシチュの絨毯爆撃とでたちどころに唯我独尊まよねーず。ワールドを構築してしまうのが通常モードなのだが、どういうわけかこの出版社の編集は彼にどこにでもあるラヴラヴ和姦ものの執筆を指示したのだ。原作つきの8本とオリジナル3本のいずれもふだんとは正反対の作風を強いられたのがこの唐突な別ペンネーム命名の源。
原作つきパート8作品はすべてコンビニ売り誌にでも掲載されていそうなド直球の恋愛ストーリーで、ハイティーンを主体にプラマイ5歳くらいのヒロインズとくり広げる惚れたハレたのイチャラヴ専科。憎からず思う彼氏彼女のどちらかから積極的に迫ってようやく一線を越え結ばれる黄金パターンの反復だ。
一方「路線を統一してラヴ多めに」と作者がのたまう完全自作3作品は、その言葉とは裏腹にまごうかたなきまよねーず。印の変格エロスが露呈する。すべての入力信号が思いきりゆがんだ形で出力されるこの作家の思考回路が生み出した「ラヴラヴ」の答えはなんと「多く突っこむことこそ愛!」というどこまでも逸般的なそれでございました。主人公が昼夜分かたずちんこを彼女に挿入し続けボコボコ性器拡張の「43cm」、ひそかに心寄せる彼の所有物として大量のローターを子宮に受け入れる「レンタル彼女」、執拗な電マ責め+男根と2本差しのハードファック三昧「雰囲気スイッチ」のいずれも過激なプレイとやけに誠実な愛情との不思議な取り合わせがなんとも形容しがたい読後感をもたらす。
かくしてラヴラヴだろうとなんだろうと誰ひとり真似できないマニエリスティックな世界へと改変してしまう彼の豪腕に改めて感服したわけだが、それがあるだけによけい他人の手が入った残りの作品のどうしようもない凡庸さが目についてしまう。イカレた世界観でこそ輝く平板な絵柄はただのラヴコメだと一気に魅力を失ってしまうのだ。ペンネームの使い分け云々はさておいて、やはり別人の原案など排した完全オリジナルこそ真価が発揮されるのだと確認できたことが今回の収穫。

0 件のコメント:

コメントを投稿