2010-09-20

今週の家族シネマ。

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-ハッチ「セクロス」ヒット出版社 ISBN:9784894654914
話◎ 抜○-△ 消小 総合○

引きこもり兄に妹が猛烈アタック連作2本+清楚で愛らしかった隣家の幼なじみが家庭崩壊とともに変貌し前後編+短編5本。セックスのみならず人の我執や憎悪といったダークサイドについて暗喩などで逃げずに正面から斬りこむアナーキーな作風で読者を圧倒するこの人7thコミックスだ。
例によってツヤツヤと扇情的なヒット塗りの表紙は中身のクセのあるタッチを正確に伝えているとはいえないものの、いったん本編に没入するまいどおなじみ特濃ハッチワールドがてんこ盛りでその程度のことは気にならなくなってくる。昨今流行りの萌え絵とはかなり趣が違っていて受容のハードルは高いが、ひとたび慣れればちょっとコケティッシュな造形のヒロインが急にかわいらしく見えてくるから不思議だ。ロウティーンから経産婦まで年齢は多彩ながら、そうした愛嬌についてはなぜか幼かろうと年長だろうと変わらぬ印象。
ハッピーエンドともバッドエンドともつかぬ奇妙な愛情のあり方を提示する独特のストーリーテリングは今回も健在で、問答無用の暗黒オチな数本を含め読後の妙なおさまりの悪さがいつまでも読者の脳裡に刻まれ消えてくれない。またヒーロー/ヒロインのみならずそれを取り巻く家族もしくは家庭といったもの自体がお話の重要なカギとなっていることがほとんどで、必然的にそれは近親相姦率の尋常でない高さをもたらす。社会的タブーを侵すこともいとわない狂おしいまでの欲望の連鎖が物語に重みと背徳感とを附与するのだ。
冒頭からの数本はそれでも適宜ギャグを挿入したりほのぼのとした結末を迎えたりでまだしも心おだやかに読めるのだが、中盤から後半にかけてはどの作品をとってもラスト数ページで思いきり心がどす黒くなる飛び道具ばかり。のっぴきならぬ禁忌への踏みこみを示唆してエンドの「近親相姦は最高!」、愛情のヴェクトルが交叉しないままおぞましい結末を迎える「家庭(崩壊)教師」、隣りあう両家に巣食った闇のやるせなさを冷徹に描き出した「清い花」と連続で叩きつけられる負のフォースに心の防壁もたやすく決壊してしまいそうだ。
むろんハッチ作品であるからには肉体どうしを打ちつけあうようなハードエロスもおこたりなく、みずから腰を沈めいきり立つ男根を飲みこんではケダモノのように腰を使い快楽をむさぼるヒロインズの切迫した表情がたまらなく淫猥だ。歯を食いしばり眉をゆがめながら未曾有の衝動に全身をのけぞらせる彼女らの急激な膣内の締めつけに抗しきれず大量のザーメンを子宮の奥深くめがけ放出し両者ダブルノックアウト。
ヘヴィすぎる世界観は人によっては使い勝手をスポイルしかねないし、個人的には幾人かちんこがエレクチオンしないキャラがいたのでわずかばかり抜き評価を落としたものの、こと作劇の重苦しいまでの密度とそのポリフォニックな語りの巧みさでは当代最強の部類の1人。口当たりのよいシリアルのごとき萌えエロだけでなく、たまにはこの脂ぎったTボーン・ステーキ的なハッチ作品にもかぶりついてみてほしい。

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