2011-02-02

本日の頭脳警察。

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-秋葉凪人「パンダかめんの最期」茜新社 ISBN:9784863492042
話◎ 抜△ 消小 総合○

少女2人に自由を奪われ性的玩具として奉仕表題作+前世は魔女だとのたまうひきこもり妹に翻弄されながらも激しく愛し合い中編4話+やたらとなついてくる彼氏の率直な愛にとまどうなんぎな性格の女の子連作3本+短編2本。長きにわたる沈黙を数年前突如として破りペンネームもちょっとだけマイナーチェンジして心機一転お送りする作者新世紀第1弾単行本だ。
秋葉凪樹名義での処女作「檻の中から」でエロ漫画シーンにお目見えしたのが1995年のことだが、太めのペンタッチでつむがれる少年漫画/アニメ絵のハイブリッドであるキャッチーな絵柄は当時からいまに至るまでベースラインは一貫。ただし時代のトレンドを的確に取捨選択し細かく造作のバランスをいじることで陳腐化/化石化を上手に回避しているのはすばらしい。直近数年の作品が並ぶなか唯一飛び抜けて執筆時期の古い「宵闇の魔法使い」とそれ以外のお話とを見比べればその驚異的な適応能力が見てとれるはずだ。
柔和な描線とキャラたちの丸っこいシルエットのお顔とがもたらすハートウォームな印象はしかしそこに乗っかる物語がドライヴし出すとまったく別の貌を表出させる。訥弁ではあるもののスパッと斬りこむような科白まわしと着衣や食物などに仮託したメタファを多用しながら語られるそれは絶望と死の断片が至るところにちりばめられた暗黒世界だ。お涙頂戴的にウェットな情念に訴えかけるのではなくカタストロフの進行を抑制された筆致で、しかし明示的に見せつける。
トータルではこのようにダークな空気が場を支配するのだが作品個々の単位ではその加減に濃淡があり、着実に狂いゆく未来を示唆するものから一抹の光明を見いだすものまでヴァリエーションを用意。ことに分量的にメイン扱いである2つの連作では後者寄りの展開プラスそれぞれ魅力的な造形のヒロインを据えていることもあり、読者の脳内では甘いイチャラヴの一変形として読み替えることも可能だろう。
とまあここまではかなり面妖ながらも可愛い絵柄に助けられて比較的口当たりはよろしいのだが、エロシーンに突入するや受容のハードルがきわ立って高くなる。前世紀最後の作品群「空のイノセント」で顕在化しはじめた体臭/体液への偏執狂的な執着と男子サイドに屈辱的なプレイを強要するマゾヒスティックな性愛描写がいっそう勢力を増しているのだ。なかでも男の顔面にお尻や女性器を密着させて体重をグイグイ乗せてゆく顔面騎乗位が多くの作品でフィーチャーされていて、ここに間欠泉のごとくくり出される言葉責めや足コキ/パンツコキが適宜ミックスされるという被虐嗜好男子のエルドラドが画面いっぱいにくり広げられる。ブザマな犬とののしられ顔に押しつけられたくっちゃい下着を嗅ぎながらなすすべなく精液をしぼり取られるその光景に感情移入しながら君のジョイスティックも暴発しっぱなしだ。
Mゴコロの足りないボウヤな俺はかなり抜きどころが限定され実用評価を下げてしまったのだが、いさぎよいまでにピンポイントな需要にお応えした濡れ場てんこ盛りの今作は好事家による熱烈な賞賛に包まれるはずだ。一方でなんども再読に耐える豊穣なストーリーテリングは文句なく一級品で、慎重にタームを選び過度に感情を露呈させない上質なテクストはすべてのエロ漫画読みに推奨。今回収録分ではクールぶってるくせにほだされやすいヒロインがほほえましい「まよみさん」シリーズがマイフェイヴァリット。

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