-うぃろう「シスマン」ヒット出版社 ISBN:9784894655096
話○ 抜△ 消小 総合△
日常ならざる状況に置かれた少女たちが汗と精液にまみれながら自分のもうひとつの貌に直面し短編7本。登場人物をみな一風変わったシチュに放りこむことにより秘められた欲望を解放していく一連のシークエンスをていねいにつづってゆく誠実な作風が印象的な作者初コミックス。
ぺかっと明るく屈託のない萌え絵が隆盛を誇るエロ漫画業界にあって、この人のウェッティで影のある描線はちょっと個性的でおもしろい。このへんは実用一本やりなガチエロ物件のみならずちんこの活用以外の部分が突出した異能派の作家をも取りこんで誌面を構成する阿呍の面目躍如という感じで、たとえばポプリクラブやばんがいちなどのイチャラヴ専門誌などでは絶対に出てこないタイプの漫画家だ。
2008-10年執筆の収録作品群はオール読み切りで、著者あとがきで自嘲するほどにはコロコロ絵が変わっているとは思わないもののやはり初期作品よりは直近のものの方が洗練されたタッチ。ヒロイン造形はロウ~ミドルティーンのスレンダーガールが主流で、比例しておっぱいも貧からせいぜい並クラスまでのささやかな隆起が並ぶ。漫画的ディフォルメひかえめの肢体描写はそのぶん貧相にも見えかねないが物語のリアリティを醸成するのには貢献しているといえよう。
かくして舞台装置が整えられいよいよ語り出されるストーリーはみなひと癖もふた癖もある変格ぞろい。無理やり和姦/凌辱でくくるなら前者寄りといえるが、そのひと言ではおさまらないストレンジなテイストをみな隠し持つ。爺孫相姦や少女監禁のようにわかりやすい飛び道具から通常の兄妹ラヴに軽くトゥイストを利かせたものまで程度に差はあるものの、十把ひと絡げのテンプレエロスに食傷した脳みそに新鮮な空気を注入してくれるのだ。またそれらを過不足なく語るべく1本あたりのページ数も潤沢に割かれて充実した読後感を保証する。
ありふれた毎日から少しだけ逸脱したことで獲得した心の高揚により彼女らは抑圧されていた肉欲を驚くほどすなおに解き放つ。露出癖を暴かれたヒロインが脅されるまま輪姦されるうち知り得なかった快楽に目覚めてゆく「夕焼けの図書室」やどしゃ降りの屋外で熱っぽく交わり咆吼する「雨のテニスコート」など、物語のなかの少女たちはとまどいながらも新たに獲得した快楽を急速に我がもの歳それに身をゆだねて身もだえするのだ。激しく蜜壷をかき回されるたびケダモノのように叫び声を上げ大量の精液により子宮をノックされて絶頂に達する。
キャラたちの心情にダイヴインしながら興奮をシンクロナイズドさせていくタイプの作劇だけに、どのページを手繰っても即ちんこをしごける系統のエロ漫画ではない。よって精液分泌支援用途をプライマルな評価軸とするこのブログではやや辛い採点をしてしまったのだが(作者さますいません)、豊穣なストーリー的ギミックや意外性のあるシチュの積極的な投入など読みごたえは新人らしからぬワンダフルなもので存分に楽しませてもらった。同誌から旅立った的良みらんや鈴木狂太郎のように非エロへ一本釣りされそうな気配が漂うのが心配ではあるものの、処女作品集としてウェルメイドなお仕事。今回収録分では新聞紙のメタファを少女に仮託して独創的なエロスをつむいでゆく巻末作品「新聞紙」がその不幸とも幸福ともつかぬ結末とともに強く心に刻まれた。
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