2011-12-01

今月の委任状争奪戦。

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-しらんたかし「興味アリ」ティーアイネット ISBN:9784887744165
話○ 抜○ 消小 総合○

気弱でヘタレな主人公の仕掛ける倒錯プレイの数々を口をきわめて罵倒し難詰する隣家の美少女とのねじくれた愛の行方はいよいよ混沌として表題作長編8話+プロローグ+描きおろしエピローグ。いくつもの単行本を股にかけて大活躍してきたドSヒロイン×ドM男子の一大サーガもクライマックスの通算7冊めは成年指定としての6th。
前作「仔づくりゴッコ」の発売からほぼ1年のインターヴァルを経てお目見えのこちらは、第2作「こいのり」および第4作「少女性徴期」へ分割して収録されたタイトル・チューンの続編にして(いまのところ)完結編。当初自分はそれら既刊分も組みこみコミックス1冊にまとめればいいのに……といぶかっていたのだが、今回こちらを読み終えてみるとやはりこの形で正解なのだな、と思い直した。
まず大前提として、この人が世に送り出してきた漫画作品は世界観や登場人物がみななんらかの形でリンクしている。過去作品のあとがきや人物相関図によって単発の読み切り群から今作のような長尺シリーズに至るまでが壮大なしらんたかしワールドのワンピースであると明かされているのだ。したがってストーリーの完全な理解のためにはどのみち「興味アリ」以外の物語たちも摂取が不可欠であり、そうであればよりぬきしてもさほど意味はなく全作読破が必須となるゆえん。
クセの強いアニメ絵で描かれるゴツゴツとしたボディの女の子たちはキャリアの蓄積とともに多少の洗練は加わったもののベースラインは不変。今作ヒロインにして畏敬すべき女王様・春日さんもまたシリーズの進展とともに少女から女性へと徐々に成長はしてもその強烈な個性は失われぬままだ。というかマシンガンのような言葉責めもいっそう苛烈さを増してイジメられたい願望の男子にはたまらぬごほうびに。
そんな春日さんのサド心をことさら刺戟してしまうかのように我らがヘタレ主人公・東郷くんの情けなさもパワーアップ。彼なりに策略をめぐらせて立場の逆転を図りそれはときに成功したりもするのだけれど、そうやって増長するのもつかの間、すぐさま彼女の周到なトラップにより出し抜かれこれまで以上に屈辱的な隷属を誓わされるハメになるのだ。とりわけほかの女子と関係し自信をつけた直後に春日さんから食らうしっぺ返しは強烈で、冷たく見下されノロマだクズだとののしられながら子羊のように震え寛恕を請う東郷くんのダメっぷりに被虐嗜好の貴方ならばシンクロしまくりなことだろう。
当然のごとく濡れ場においてもそれらの関係性はダイレクトに反映。寝込みを襲ったり強要ティックに押し倒したりと最初に変態行為を仕掛けてくるのはむしろ東郷くんサイドが多いのだが、大半はプレイの最中に春日さんの下克上がなされ主導権交替。ふがいない彼のおしりをペンペンしバカちんこを玩具のようにもてあそんでは射精を強いる彼女の強権発動におびえ服従する醜態を全面フィーチャーだ。
そんな2人の主従逆転ライフに思わぬ転機が訪れるのが今作最終盤。詳細についてはせっかくの物語のキモなのだからぜひ本編を読んでいただきたいが、このシリーズにいったんケリをつけるにあたってこれまで単発的にのみ表出していた春日さんの真の想いがそのきっかけとともに明るみになる。もっとも東郷くんの方はせっかくのそれをちゃんとした形で耳にできず最後はやっぱりイジメを食らうのだが、すべてを目にしたわれわれ読み手は一連の光景をニヤニヤしてながめられるってな寸法。おそらくは幾歳月が経過したのちであろうエピローグを読み終えたのちは充実感といくばくかの寂しさにふっとため息をついてみたり。
およそMっ気の希薄な自分はしらんたかしの真髄たるこの連作をずっと苦手としてきたものの、終盤の怒濤の展開にはさすが渾身のライフワークだと感慨を新たにした。恒例のカヴァー下詳細解説によると事情が許せば続きも描きたいということなので、彼のファム・ファタルである春日さんなきあとはどうするのだろうと要らん心配をしていた自分もホッと安堵。パワフルなエロシーンとヒリヒリするような心象描写とを存分に楽しませてもらったこのシリーズのとりあえずの完結にまずは祝杯を掲げたい。

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