2014-10-15

今宵の辞任会見。

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-A-10「GIRL? NEXT DOOR」ワニマガジン社 ISBN:9784862693297
話◎ 抜○-△ 消小 総合○

かねてから懸想していた下宿先の未亡人と偶然結ばれたのちは一転ただれまくりの愛欲生活突入表題作連作3話+しがないイヴェントスタッフたる主人公は突如超セレブお嬢さまから告白され押しかけご奉仕に悶絶連作2話+独立短編4本+作品対抗エロ合戦おまけ漫画。軽やかかつ端整な絶品のヴィジュアルでもって超ド級の変態行為の数々をくり広げるすさまじいまでのギャップが読者の脳髄をグリグリえぐる作者ひさしぶりの完全新作商業単行本だ。なおこちらは9月末発売のものを超遅延でのレヴュウとなっていることをあらかじめお詫びしておく。
漫画家としてのキャリアは10年以上にわたるもののこれまで世に送り出したコミックスはわずか2冊、しかも2冊めは再録に新作パートをプラスだから実質的には1.5冊分くらいと、通常このペースではプロの絵描きとして食えているとはとうてい思われない。ただしそれはこの人の本業がゲーム畑の諸々であるからで、商業エロ漫画はいわば余技、むしろ薄い本の方がよっぽど人口に膾炙しているくらいだ。では前単行本「Lord of Trash 完全版」発売から4年半の歳月を経てリリースのこちらがやっつけ仕事なのかというとまったくそんなことはなく、全編これハンマーで頭を打ち砕かれるみたく刺激的な作品がズラリと並ぶのだからすごい。
前述のようにさまざまな分野で活躍するマルチクリエイターであり、特段そのことを隠してもいないので彼の多彩な活動についてはちょっと検索すればすぐにわかる。やや乾いた描線でつむがれる端整なタッチは作品によっていかようにもニュアンスを変えさまざまなタイプの物語へフィットさせる融通無碍なもので、それでいてA-10独自の個性が全ページから匂い立つ唯我独尊ぶり。その洗練された筆致は巻末あとがきゲストの和六里ハル縁山をはじめ幾多の同業者から多大なリスペクトを受けており、音楽業界で言うところの「ミュージシャンズ・ミュージシャン」の漫画家版を挙げるならばまさにこの人のような存在が該当するのだろう。
もとより老若男女なんでもそれらしく描きこなす人だけれど、今回は年上女性×年下男性のカップリングが多い関係上、主演女優たちは比較的年増寄り。ただどのキャラもいわゆる妖艶な熟女ではなくお茶目でかわいらしいお姉さんといった趣であり、同時に出てくる若い娘連中とさほど雰囲気に差はないのでBBA苦手でも受容は容易かと。しかしながらこの愛らしい造形を同様に男性キャラでもへっちゃらでやってのけるのだから読者はヒーロー/ヒロインどっちに萌えたらいいのかわからないよ!
このきわめて洗練された作画に乗っかる物語たちはその絵柄以上にきわ立ってその独自性を主張する。外面的にはオーソドックスなエロコメの範疇になるのだろうが、現在の成年向け漫画誌において支配的な10代男女カップルのイチャラヴ和姦などひとつも存在せず、必ずどこかにそれと反するようなシチュを設定するからだ。そのあたりはカヴァー下の作品解説でも明確に述べられており、キャラデザでも年齢でも性格描写でも意図的にお約束を外し変則的な要素を投入して世間一般のエロ漫画に異議申し立てをしてみせる。作画はわりとプレーンなのにオハナシには過剰なまでにネタが盛りこまれ、科白まわしも表情変化もエロ演出も極端に密度が高く強弱の振幅の激しいパラノイアックな描写が延々続くのでちんこを握る前に早くもニューロンの処理能力が破綻しそうだ。
かくしてくり広げられる濡れ場もまた異様に濃厚なもので、コッテリとトーンを張り巡らすタイプではないかわり怒濤の勢いでコマに叩きつけられるフキダシと擬音と変顔百面相の織りなすハーモニーとで画面がみっちり埋められる。またひときわ特徴的なのが各種の変態性癖で、ことに足の裏やら分泌物やら体臭にまつわるフェティシズムが横溢。加えてひょっとこ顔でのヴァキュームフェラに代表されるえげつない前戯や超高BPMでたたみかける言葉責めなどは本番以上に執拗きわまりなく、随所に流線が飛び交う背景ともあいまって読み手の視神経へひりつくような刺激を与える。とどめに男性受けや男の娘、両性具有などマチズモを根底から揺さぶるような設定のなか少年たちもまた淫靡に乱れイキまくるカオティックな情景で男子も女子も渾然一体となりながら忘我のオーガズムへと一直線。
一部の作品で展開されるようなヒロインによるサディスティックな責めやふたなりエロスなど私的嗜好と真っ向から対立するシチュではさすがにマイちんこがおとなしくなってしまったが、そうした「シュミではないもの」を含めすべての画面情報にガッチリ脳髄を組み敷かれ強引に大脳中枢をねじ伏せて思惟を支配するとてつもないパワーこそがA-10漫画の最大の特色といえよう。この脳みそがレイプされるみたいな一種のおぞましさは同時に受容のハードルを高くもしてしまうものの、いちどはこの奇妙な感覚を体験しておいて損はない。ただビギナーがこんな純度の高い覚醒剤みたいなブツを一気に連続投与されると刺激が強すぎるので、この人の漫画にはじめて触れる向きには毎日チビチビと少しずつ読み進めるのをオススメ。常識の呪縛にとらわれたヤワなボウヤたる自分は、まだしもノーマルエロの体裁に近い風な(ヒロインかなり変態ですが)「エーデル腐ロイライン」連作だとまあフツーに使えたかなと。

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