2014-11-11

今宵のマリネラ王国。

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-史鬼匠人「常春の少女たち」ティーアイネット ISBN:9784887745391
話○-△ 抜○ 消小 総合○

男と女の情欲うずまく遊郭の島へ借金のカタとして送りこまれた男のめくるめく女体盛りの日々、そのかたわら初登楼を前に島の掟を破った少女は極悪非道の凌辱を受け続け……長編4話&描きおろしプロローグ/エピローグ+独立短編1本。精緻な作画でもってドメスティック・ジャパンの隠微な光景をヴィヴィッドに描き出す作者最新刊は通算2冊めのコミックスだ。
雑誌本体はたまのスポット買いながら、毎月の単行本リリース時には精力的なセールストークとその期待にたがわぬ良作を提供してくれることで、この版元の刊行物は比較的マメにレヴュらせてもらっている部類。しかしながらTI期待の新鋭であるこの著者が去年7月に上梓したデビュー作「if~時限の彼女~」は申しわけなくも未購入であり、本作は予備知識ほぼ皆無での初挑戦となる。ゆえに前単行本で既知のことがらを踏まえずにトンチンカンな記述をしてしまうかも知れないがひらにご容赦を。
のっけから女体てんこ盛りではあるもののいかにもな肌色ピンク全開ではない、しっとり抑制された色調が印象的な表紙絵をめくると、非常に細かくペンが入れられた緻密な作画がぼくらをお出迎え。基調となるのはオーソドックスな一般青年誌調のタッチながら、どこか病んだ雰囲気すら感じさせる暗めのトーンワークともあいまって画面全体に影が差したかのようだ。このきわめて特徴的な絵柄を歓迎するか敬遠するか、ここがまず史鬼匠人受容の第1のハードル。
この端整な筆致でつむがれる女性陣は巻末短編が女子高生ヒロインとなるほかはその設定上おそらく全員over18。全般的にはビッグバスト傾向ながらいかにもエロ漫画という趣の爆乳は存在しないし、肢体描写もモデル的ナイスバディではない、現代日本女性の体型としてふつうにありそうな現実的なもの。いわゆる萌えテイストは希薄ながらキュートさは相応に含有されており、2次元スキーと3次元大好きっ漢のどちらをも満足させ得るキャラメイクだ。
ヒロインのコミカルなエロ妄想ネタを開陳しながら終盤の夢うつつ逆転シチュへ手際よくつないでゆく巻末読切「思春期妄想期間」はさておいて、本作コンテンツの軸となるのはやはり冒頭からの長尺シリーズ「常春」。区画全体が巨大な遊郭となっている離れ小島を舞台に、そこで働く遊女や彼女らを取り巻く男たちのあれこれをつむいでゆくのがメインとなる。第1話から2話中盤まではこの島へよそ者としてやってきた冴えない青年・長谷部(はせべ)の視点から異界としての島の情景と突如女たちに囲まれ成り行きHのハーレムシチュを展開。このままお気楽女体回転寿司路線を貫くのかと思ったら、途中からはいきなり楼主の息子・春風(はるかぜ)と、彼を慕う新造・雪霧(ゆきぎり)との道ならぬ恋、およびそれゆえの彼女の受難がストーリーを支配する。物語は一気に暗転し強姦輪姦てんこ盛りの凄惨な場面が延々続くさまに読者の脳みそは混乱必至だ。永遠に終わらぬかと思えた欲望と暴力の宴はしかしながら思わぬ形で収束し、間わるすべての者たちがそれぞれの道を選び取り大団円。
いやしくもエロ漫画であるからには波瀾万丈疾風怒濤の物語進行のさなかにもとどこおりなく濡れ場をピンポイント爆撃。明確にオハナシへ重心が置かれた構成でありながらも、1話あたり30ページ以上の大ヴォリュームを利して密度の濃い性器どうしの真剣勝負がくり広げられる。大量の遊女たちが入り乱れプロフェッショナルならではの超絶テクでご奉仕の前半部と、メインヒロイン2名が餌食となりむくつけき男どもの果てなき凌辱に心身を蹂躙される後半部の、それぞれ真逆な2種類のセックスのどちらも目いっぱい堪能できる仕掛けだ。
白々と光る裸体をあらわにして女たちは自身を武器に男を狂わせる。ハーレムパートでは目の前の男根にしゃぶりつき指や舌先で猛り狂うそれをなだめすかしては絶妙な腰使いでたちまち野郎ども昇天。一方囚われの身となってからは全身を緊縛され有無を言わさず全部の穴をふさがれて乱暴に内奥を貫かれ内へ外へと白濁液をまき散らされる屈辱を甘受する。合意/強要いずれにしても遊女の性でどこまでも男性の快楽を引き出し無意識のうちにすべての精をしぼり取る夜叉と化す光景がおそろしくも淫猥だ。
古式ゆかしい美しき情緒と前近代的な因習の桎梏との両方を読み手の前に提示するジャパニーズ・ファンタシーの魔術に最初から最後まで心地よく没入し愚息もご満悦。序盤と中盤以降とでお話の空気が一変する構成は意図してなのか描いてるうちに気が変わったのか判別できないのだけれど、もし前者ならば異なる方向性のエピソードを貼り合わせの接続部がややギクシャクしてキャラの言動もところどころ唐突に感じたので、今後そのあたりが洗練されればと思ったり。ともあれたいそう意欲的でスケール感のある作品であることは間違いなく、次回もまたこのような豊穣な物語空間で楽しませてもらいたいもの。

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