2016-07-15

今週の炉端焼き。

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-東野みかん「愛紡島(あつむじま)の女神サマ」竹書房 ISBN:9784801955820
話△ 抜△ 消無(詳細性器描写なし) 総合△

彼女に裏切られ職も失った主人公は短期滞在で訪れた離島の奇妙な風習の標的とされ毎晩夜這われまくり表題作長編全7話。マークなし。性にオープンな風土のもと居並ぶぽっちゃり女子連中に傷ついた心も身体もすっかり癒され新たな恋を育んでゆくハートウォームストーリーを展開の作者最新刊は通算3冊めのコミックスだ。
基本的にはライトエロ生え抜き漫画家に対しノータッチの自分が現在までマークなし単行本オンリーのこの作家を知ったのは、茜新社発売のJKヒロイン専門誌「コミック高」に短編が掲載されたのがきっかけ。過去に2冊のマークなし単行本を上梓しているもののそれらをまったく追いかけてこなかった俺もそんなわけで東野みかんに関するいちおうの予備知識はあった。だもんでいくらか遅延レヴュウではあるけれどえらく煽情的な表紙にも惹かれはじめて評価の俎上へ載せてみる次第である。なお本作と同時に既刊2冊の選り抜き総集編「ぽっちゃり女子に癒されたいっ!」がリリースされているので、改めて作者買いにいどみたい方はそちらもぜひ。
たいそうさわやかなブルー系の背景をバックに清楚でキュートなおにゃのこが手を広げぼくらをお出迎えのカヴァーイラストは非常に好感度の高いもの。中身のモノクロ原稿もその印象を引き継いだスッキリ爽快一般青年誌系のタッチで誰にでも受け入れられやすい雰囲気だ。収録作の初出を見ると2015-16年にかけ当版元刊行の「ビタマン」掲載分と直近執筆のものばかりゆえ筆致も安定。いまどき版元公式サイト内の単行本情報ページで立ち読みができないのは残念だけど、表紙だけ見てのジャケ買いでも裏切られることはないだろう。
キャッチーでクセのない絵柄はまあそれほど奇抜ではないかも知れないが、東野みかん描くところのヒロイン造形は超個性的。というのも出てくる女子みなデ……もといふくよかな体格の娘ばかりなのだ。10代ラスト近辺~人妻まで年齢は比較的ワイドで性格の描き分けもしっかりしているのだけど、ボディラインは例外なくご立派な体幹で余ったお肉が随所でフニフニ。おっぱい少なめの娘ですら手足はみごとに太ましくて、スレンダー女子なんてただの欠食児童だ!と力説する健康優良児大好きっ漢の琴線に触れまくりなデザインだ。逆に言えばこのきわ立って特徴的な女の子たちをラヴリィだと歓迎するかぜい肉の塊だと排斥するかが東野みかん作品受容の分岐点。
そんな彼女らとくり広げるのは慎太郎シール誌にピッタリフィットのちょっとエロくてほのぼの心温まるストーリー。祖父の遺品整理で東京から半日行程のはるかな離島・愛紡島(あつむじま)に紆余曲折あり傷心の主人公・和泉流(いずみながる)が降り立つところで物語がスタート。上陸の日にたまたま島の奇妙な祝祭――女の方から好きな男の家へ夜這いをかける「愛紡祭り」――期間にぶつかったことで、初日から近所のお姉さんに美味しく頂かれたと思えばつぎにはスーパー店員ちゃんに忍びこまれさらに診療所のナースさんが来訪してとのっけからハーレム状態だ。そんななか祭りの狂騒と距離を置く雑貨屋の看板娘・一ノ瀬雫(いちのせしずく)とイイ感じになった和泉は失恋の痛手を振り切り彼女に思いを告げるのだが……その後は読んでのお楽しみ。序盤は女体回転寿司、中盤以降はオーソドックスな純愛ものといずれもエロ漫画的定番そのものの進行で新鮮味には乏しいけれど、そのぶん水戸黄門的王道を心地よく摂取し最後の大団円まで裏切られることなくハッピーに堪能できる仕掛け。エロ漫画にどんでん返しだの予想外のストレスフルな展開だのをお望みでない貴方への一種の模範解答だ。
マークなしエロ業界内でも自主規制のキツい竹書房なので、エロシーン含有率は控えめで性器描写などもってのほか。極力ちんこまんこが見えないアングルで交合が描かれ、結合部を映し出さざるを得ないときは人体パーツやフキダシ等で巧妙にそこが隠蔽される。従って我々が目にすることができるのはヒロインたちの絶品トロ顔や大ぶりの淫靡なニップルなどであり、それらを頼りに息子を駆動するスターターとしての役割はどうにか果たせそう。ストロングセックスの応酬などは望むべくもないが、甘やかな睦言を交わしつつ2人してきつく抱きあいたゆたゆボディをハードに使役して最期気持ちよく膣内射精へと至るまでのプロセスを終始ニヤニヤしながらながめるのが吉。
ハードコアファック至上主義の当ブログではこの種の物件をどうしても正当に評価しづらいのだけれど(作者さますいません)、タナボタエロスに一定の説得力を与える設定の妙やメインヒロインのあざとすぎるまでにエロな若人のツボを突いた言動など、ヒーリングツール構築の勘どころを的確に押さえた構成は職人芸的うまさを感じる。既刊2冊ほどぽっちゃりを前面に押し出していないぶん初心者にも取っつきやすく、東野みかん入門編としてもオススメ。個人的にはいま不定期に描いているコミック高掲載作品がまとまってめでたくマークつき単行本刊行へこぎ着けてくれるとうれしいなあ。

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