-柚木N'「ずっと好きだった」ティーアイネット ISBN:9784887746268
話○ 抜○ 消小 総合○
幼なじみ同士から晴れて結ばれた2人だけど彼女の身体はすでに別の男に開発されていて……表題作長編7話&巻末描きおろしエピローグ。思いとは裏腹に欲望の隘路へ追いつめられてゆくヒロインの悲劇とそうであるからこそ刹那的な快楽におぼれイキ狂う光景がいっそう切なくも淫猥な作者最新刊は成年向け作品集としての通算14冊めにして当版元からの4thコミックスだ。
エロ漫画界きってのワーカホリックたるこの人も数年前からついに一般進出を果たしたのちはさすがに産出ペースがダウン。そうこうしている間に掲載誌のひとつが消滅してしまいお仕事の重心はどうしても非エロに傾きがちなところ、それでも「COMIC夢幻転生」では変わらぬド迫力エロスを見せてくれていてありがたい限りだ。そんな作者待望のニューリリースは茜新社より一昨年刊行の前単行本'「姉キュン!」から2年ちょっとの歳月を経て登場。なおTI物件としては2013年春に上梓された「椎葉さんのウラの顔。」以来3年半ぶり。
オーソドックスな一般青年誌系のさわやかなタッチはデビュー当初こそ若干の粗っぽさが感じられたものの、2010年代初頭くらいからはおおよそ完成形に達し以後は高値安定。多忙な一般連載の合間を縫って2013-16年にかけ夢幻転生および前身の「COMIC Mujin」へ断続的に発表されたもので執筆間隔はけっこう空いているのだけど、新旧間のギャップはそう気にならないはずだ。なお本レーベル恒例の1話試し読み&内容サンプルが出版社公式サイト内の著者特設ページに用意されているので、柚木N'未体験の方は先にそっちを覗いておくのをオススメ。
柚木N'といえば姉もの!というくらいに魅力的なエルダーシスターを多数生み出してきたこの人だけど、今作ヒロインであり表紙にも抜擢のショートヘア水泳少女・白羽雪菜(しらはせつな)さんは後述するように同年齢幼なじみキャラなのでお姉ちゃん大好きっ漢はご愁傷さま。そして彼女が全編通しの主演女優にして今回唯一の抜き担当なので、表紙/裏表紙を見て好みのタイプでないと判断したならば単行本自体を回避するのが吉。まあ俺は強度の短髪巨乳女子スキーなのでなんの文句もございません。
底抜けに明るいエロコメから陰鬱なダークエロスまで幅広く描きこなす作家だが、今作の路線は明確に後者寄り。とりわけ広告宣伝や帯コピーでそれと示唆しているようにいわゆるNTR的要素がふんだんに盛りこまれているので(ヒーロー/ヒロインの恋愛成就前にアクションが起こされていることから厳密な意味での寝取られネタとは異なるのだけれど)、運命の2人がめでたく結ばれるタイプのお話を読みたい方は即座に回れ右推奨。
まず第1話、腐れ縁の幼なじみ男子女子――明石銀太(あかしぎんた)と白羽雪菜――の無邪気なじゃれ合いから物語がスタート。雪菜のサッパリした気性もあり悪友同士みたいなつきあいだった2人が秘めた恋心を互いに披露しようやく結ばれてハッピーエンド……と思ったところから第2話以降の地獄が時間をさかのぼり描かれるのだ。雪菜の方は早くから銀太への愛を意識しており彼の体操着の匂いをこっそり嗅いだりするのだが、その場面を水泳部顧問の黒木(くろき)に目撃されたのが運のつき。執拗な脅迫に屈し処女を奪われた雪菜はことあるごとにセックスを強要されるうちいつしか心も身体も肉欲に屈してゆく。次第に快楽のとりことなりあらゆる部位を開発されては生で膣内射精をくり返されすっかりオンナの肉体へと作り替えられた雪菜の胎内にはある兆しが……という最終話の展開がもういちど第1話冒頭の時間軸へと直結する凝った仕掛けは単行本で通読してこそ真髄を味わえるもので、もしかするとどこかで正道へ引き返せたはずの分岐でことごとくウラ目を引き取り返しのつかない事態を招来させた雪菜に対し我々読者はなにも助け船を出せない無力感をひたすら噛みしめることとなるのだ。そんなやるせない気持ちを抱えつつもかすかな救いがもたらされるのが描きおろしの後日談においてで、ここで明かされる雪菜のその後と彼女に相対し言葉を交わす親友・桃萌(ももえ)とのやりとりを通じ、雪菜の壮絶な覚悟と苦しみがもしかすると癒やされるのではという希望をもって物語が締めくくられたことにより我々の煩悶もようやく安らぐのですよ。当初予定にはなかったというこの加筆パートの存在が本作を単なる凄惨なNTRものに終わらせなかった主因であり、物語最終盤からエピローグにかけての清冽な読後感はぜひみなさま自身で堪能していただきたい。
重厚なストーリー展開のかたわらで雪菜の快楽受容プロセスもまたじっくりねっとり執拗につむがれる。序盤はひたすら拒絶と苦痛のみだった彼女の態度が黒木の男根をねじこまれ熱い精を幾度も子宮へ注がれるうちいつしか女の歓びを引き出され、変態的なプレイやえげつないシチュも嬉々として受け入れてついにはいっちょまえのメスとして歓喜に打ち震え絶頂するに至るまでの過程を詳細中継の濡れ場は、その倫理的なヤバさを別にすれば読み手の潜在的な願望――純真無垢な少女を自分好みの専用セックスパートナーへと育てあげる――をみごと具現化したものといえよう。
屈辱のうちにヴァージンを散らされ涙する彼女も未通女の固い肢体を幾度となく貫かれるうち妖艶な牝のボディへと変貌を遂げ覚えたての快楽に身をよじらせ没頭だ。好きでもない男の胴体にしがみつきしきりに淫語発しては膣内射精をおねだり。未成熟な蜜壷の奥底へ2度3度4度と容赦なくザーメンを叩きつけられるたび灼きつくような衝動に脳を焦がし絶叫する浅ましいまでの痴態を見せつけながらただ一個の肉便器へ堕ちてゆくヒロインの残酷なまでの末路はしかしながらそれゆえにいっそう妖しく輝くのだ。
ヒロイン完堕ちまでの過程にたっぷりと尺を割くぶん抜きツールとしてはやや前半部にもの足りなさを覚えるものの、ついにセックスに開眼してからのド派手なイキっぷりで相殺というところ。なにより切々としたヒロインの悲しみ/痛みがダイレクトに伝わるお話運びの妙は長編作品としてのスケール感を存分に活かしたできばえ。もしかすると原作つきの一般作品でえらくはっちゃけたコメディをやっている反動でこれだけ沈鬱としたお話になったのかも知れないが、なんにせよストーリーテラーとしての本領をエロの方では以後も存分に発揮していただきたいものだ。雑誌連載分だけ読んでいた人もぜひ本作を購入し描きおろしエピローグまで目にしたのち感動に打ち震えるべし。
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