-鉢本「あっ…ニュルってはいった…」メディアックス ISBN:9784862018311
話○ 抜○-△ 消小 総合○
あこがれの女教師に恥ずかしい現場を目撃された主人公は叱責を覚悟したものの意外にも彼女の方から積極的に仕掛けてきて……連作2本+独立短編8本。ありふれた日常のなかを生きるヒロインたちがほんのわずか見せるアブノーマルな性の深淵を注意深くすくい取り我々の前に開示する作者これが記念すべきファーストコミックスだ。なお機種依存文字につき省略したが、本来はコミックス表題の最後にハートマークが付属する。
なん度も発行誌の創刊/休刊をくり返したり発売元を変えたりしつつも、前世紀から途絶えることなくこの界隈で商売しているのが「comicアットーテキ」を源流とし「Comicトウテツ」/「コミックジェシカ」へと続いている一水社系列だ。ワニやコアみたくシーンの最前線に立ったことはいちどもないけれど、そのぶん執筆陣にはメジャーな舞台からこぼれ落ちるような個性派を多く抱えている。そして本稿で紹介するこの新人も間違いなくそんな系譜のひとりであり、唯我独尊のオリジナリティがなによりのウリ。
まるでAVみたく身もフタもないタイトルと桃色基調の派手めなカヴァーデザインはいかにも抜き特化のエロ本という趣なのだけど、ページを手繰り出てくるのはやけにスッキリしたある意味色気のないヴィジュアル。エロ漫画というよりヤンマガだのヤンジャンだのコンビニで普通に売っている一般青年誌でそのまま連載でもしてそうなプレーンな絵柄だ。昨今流行りのやりすぎなくらいコッテリしたトーンワークとも無縁で若干の寂寥感を覚えはするものの、そのぶんクセなく誰にでも受容しやすそうではある。版元提供のコミックス情報ページから内容サンプルも参照できるので、本屋で中身をチラ見できない環境の方は先にそちらを当たるのがベター。
このたび登場の女性陣はおおむね思春期真っ盛り~20代なかばあたりと現代エロ漫画界の最大公約数的配置。最年少でJCもいるけれど、みなさん頭身高めスレンダーな造形でディフォルメも少なく学生キャラでも大人びた印象だ。おっぱいもキッチリ存在を主張しつつも現実的なサイズに収まっており、昨今よくあるド迫力の爆乳さんなどが苦手の方には好適。飾り気のないタッチにふさわしくブリブリの萌えっ娘やフェロモンダダ漏れお姉さまなど2次元特有の味つけ過剰なヒロインは出てこず、どうかするとそのまま街なかを歩いていそうな地に足の着いた――イジワルに言えば地味っぽい――キャラメイクとなっている。
ストーリーラインは一部ある強要系のお話を除けば日常エロコメ中心となるが、そのような既存のカテゴリーに収めようとするのがどうも居心地悪い奇妙な味わいが鉢本漫画の特徴と言えようか。ファンタシー的色彩の一切を廃したドメスティック・ジャパンを舞台に学生や社会人たち――それもエリート学園だの一流企業だのでなく、単なる公立高生だったり工員やコンビニバイトなどロウワー・ミドルクラスの働き手だったり――がとくに波乱もない散文的な日常を過ごしているさまはどうかすると平板きわまりないのだが、そこへアクセントを加えるのが彼ら彼女らの隠し持つちょっとだけ変な性的嗜好や特殊な願望。セックスへの過剰な興味だったり露出癖だったり匂いフェチだったり、退屈な生活のなかわずかにかいま見せたそれがたまたま居合わせた異性を巻きこみ突如として作品世界からおかしなビートが発生しはじめるのだ。
プレイ内容も付随してノーマルなタイマンエロスのなかにも少しだけ変な性癖をプラスしたそれ。お外でいたしたり足コキしたりお漏らしさせたりのちょっとした変態要素が2人の気分を高揚させファックに彩りを添えるのだ。加えて体臭や陰毛などボディ自体へのフェティッシュなこだわりを示すキャラが多いのも特徴で、この作家特有の若干リアル寄りな肢体描写とも相まってやけに赤裸々な人間くさい肉の交わりが全編にわたりくり広げられる。
恥ずかしい性癖を目撃され、あるいは自分から臆面もなく欲望をさらけ出して女子どもにわかに発情モード。いったん覚悟を決めれば惜しみなくその肢体を白日のもとさらけ出し胸部も蜜壷もフルオープン。目前へ突き出された怒張へしゃぶりつきねっとり舌先を這わせながらノドの奥で熱いほとばしりを受け止めトロけ顔。昂ぶる気持ちのまま肉ヒダをみずから押し広げシャフトを飲みこんで性器どうしの真剣勝負をスタートだ。粘膜もめくれ上がるほどに内奥を突き上げられギュッと抱きつきながら小刻みに嬌声を発するさまがなんともエロっちい。呼吸を荒げ全身をよじらせながら昇りつめてゆく彼女のヘンタイまんこに最後たっぷりと熱い飛沫をプレゼント。
なんてことない日常から少しだけ妙な性癖をトリガーに一瞬でギアチェンジの鮮やかな変貌ぶりを的確につむぎ出す清く正しい変態漫画。ヤワなボウヤである自分は一部のエグいプレイにおののいて抜き評価を若干マイナスしたが、人体酷使系の苛烈な行為はないので通常は問題ないかと。ただ成年作品らしからぬ乾いたタッチといい全編にただようオフビートな雰囲気といい、いずれこの業界から旅立って一般向けのオリジナルな青春漫画でも描くようになるのかなという気はする(エロ作家の転身先としてよくあるゲーム/ラノベコミカライズ担当には逆に不向きな感じ)。ともあれしばらくの間はこの界隈にとどまりちょっとヘンなエロスを供給していただきたいもの。このたび収録の物件中では、コミュ障ぼっちなJKヒロインが先生との言いなりセックスにだけ心の平安を見いだす「終わるな思春期」と、えっちしか頭にない女子と彼女に告白され困惑の同級生男子とがいきなりラブホで実戦の「2人はエッチ部」がとくによござんした。
はじめまして。買うかどうか迷うコミックスがあったときいつもレビューを参考にさせていただいております。
返信削除先日全くノーチェックだったこちらのコミックスのレビューを拝見してピンとくるものがあり購入したところめちゃくちゃ自分にとっての大当りで最高でした、"ヘンなエロス"との出会いをありがとうございました!
>匿名様
返信削除常日ごろからのご訪問、ありがとうございます。
もとよりつたない文章力でいつもウンウン呻吟しながらのレヴュウ書きですが、
今回は幸いにもお役に立てたようで、うれしいやら面映ゆいやら。
これからもさまざまなエロ漫画をご紹介していければと思っていますので、
引き続きご愛顧よろしくお願い致します。