-桃月すず「あまあま」ワニマガジン社 ISBN:9784862694812
話○ 抜○ 消小 総合○
入院中のヘタレ男子&明朗快活ギャルナースの凸凹ラヴ模様連作2本+独立短編9本&描きおろしショート後日談6本。相思相愛男子女子のコージー&スムージーなラヴ・アフェアをしっとり情感あふれるタッチで軽やかにつむぎ出す作者最新刊は黄色い楕円仕様としての3rdコミックスだ。なお機種依存文字につき記載を省略したが、本来は単行本タイトルの末尾にハートマークが付属する。
快楽天系列のなかではヴィジュアルもプレイ内容も比較的エグいタイプの作家が集積する「COMIC失楽天」にあって、いまどき真っ当すぎるほどプレーンな絵柄で特殊な趣向のいっさいないノーマルエロを展開しているのがこの人。そんな素うどんみたいな芸風でいながら当たり前のようにレギュラー執筆陣に名を連ね次々とコミックスを刊行できるのは当然それだけの確固たる実力を備えているから。そんなわけで着々とストックもたまり、前単行本「ヒミツしたいっ」からちょうど2年のインターヴァルを経てのお披露目。
少女漫画/一般青年誌系のほどよいハイブリッドであるその絵柄はいかにも売れ線のタッチで、このキャッチーな作画を武器に最近では別媒体へ進出し単行本を上梓したりもしている。今作のクレジットを見ると2015-17年にかけての失楽天掲載分に描きおろしパートをプラスと直近の原稿ばかりゆえクオリティも高値安定だ。なお出版社公式サイト内の新刊情報で店舗購入特典やサンプル画像が参照できるほか、作者ブログのえらく盛りだくさんな発売告知記事でいろいろこぼれ話が読めるので、本屋へレッツゴーする前にまずは一瞥すべし。
このマーヴェラスなお筆先から生み出されるおにゃのこ連中は年のころハイティーン~20代なかばあたりの黄金世代で占められる。デザインの基調は童顔寄りのフェイスにわりかし盛りのよいボディが組み合わされる昨今流行のそれであるけれど、ふわふわの髪の毛や細かくドレープが入れられた衣服などがよりフェミニンな雰囲気をかもし出していてグッド。むろんエロ漫画ヒロインであるからにはなんとも美味そうにトーンワークがほどこされたおっぱいやぷっくりシズル感あふれるまんこなどエロパーツ類もぬかりなく煽情的に描写。
そんな彼女らが乗っかるのはきわめてオーソドックスな1on1のさわやかな和姦ストーリー。長年の幼なじみからごく事務的な出会いではじまるものまで、初々しい恋ありただれまくった関係ありとカップルたちのありようも多彩だ。今作タイトルが示唆するようにオハナシには従来以上に甘口方向へのドライヴがかかっており、とりわけ意気地なしだったり小心者だったりの男子をときに優しくときに豪快に癒してくれる系のヒロインを配したいくつかの物語はそのあまりの居心地のよさにずっと作中世界から離れられなくなる危険なパワーを秘めている。そのぶん恋愛のリアリティは一歩後退した感もあるが、もしかするとアンケートなど各種の反応を見てユーザーの願望寄りへいくらか軌道修正をほどこした結果なのかも。また大半の作品は登場人物同士が家族や友人関係などでリンクした一種のユニットになっていて(その多くは2本1セットの構成)、お話を読み通すうちそれらの関連に気づいてニヤリとさせられる仕掛け。通読してもピンと来なかった方のためにはカヴァー下に関係性の見取り図が親切にも用意されているので、一読したらまずはガワを剥いでみよう。
1本あたり16-20ページとややタイトな構成のうえストーリー主導型の造りで濡れ場占有率は高くないものの、お肌を密着させながら身体のいろんな部分を接触しあうやたら淫靡な愛撫シーンと桃月すず謹製のとびきりナイスなヒロインイキ顔百面相とが読み手の勃起中枢を大いに刺戟。汗ばむボディをピタッと重ねながら熱く口づけネチョネチョと体液の交換にいそしんでは2人しっぽりガチンコファックに没頭してゆくさまがなんともエロティックなのだ。長らく睦みあい熱い精を放たれたのちも身体を火照らせたまま余韻にひたりピロウ・トークを交わす彼女らの艶姿がたまらない。
愛し合う2人は寸暇を惜しんで体躯を寄せあいせわしなく愛の営みへと彼ら自身を投企する。たわわな双丘の両サイドから彼女は暴れん棒をはさみこみ熱心にご奉仕してたちどころに先走り汁を搾取だ。インターヴァルなしでこんどは濡れそぼつ蜜壷へそれを差しこみハードな摩擦運動を開始。激しく腰を打ちつける旅全身をくねらせ顔を熱く上気させてよがり狂うさまがおそろしく煽情的だ。漏れ出る嬌声のヴォリュームが上がり汗と涙とよだれまみれで昇りつめてゆく彼女の内奥めがけて2度3度と白くねばつく液体をプレゼント。
なんのヒネリもないありふれた情交なのに相思相愛バカップルの熱っぽいダイアローグとヒロインズの絶品アクメフェイスのみでなん杯でもおかわりできる桃月すずマジックの威力はますます増し、全力で男子諸君を慰安してくれる彼女らの包容力あふれるホスピタリティを前にして殺伐とした日常によどんだ君のハートもたちまち浄化されること必至。強いて重箱の隅をつつくなら依然として女性器描写は出し惜しみぎみで射精シーンもアッサリ済まされる感があるものの、この人の作品を愛好する層に対してはさほどフェイタルな弱点とはならないかと。出てくる女子みな魅力的な造形と極上の痴態を見せてもらったが、なかでも自分的には本来それほどツボでも……なタイプなのにその甲斐甲斐しい世話焼きっぷりと随所に見せる外見とは裏腹の純情さに胸きゅんきゅんな黒ギャルナース・市ノ瀬和香(いちのせわか)さんの八面六臂の活躍が印象的な「夏夜の太陽」/「恋する太陽」連作が今回のフェイヴァリット物件。
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