2018-02-15

今季の定位置競争。

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-山田タヒチ「夕闇の女子交性」コアマガジン ISBN:9784866531519
話△ 抜○-△ 消小 総合△

ビルのすき間の暗がりでひとり自慰にふける少女とそれを目撃したクラスメイトとの互いにむさぼり合うセックス前後編+学校という器のなかでひそかに醸成され解放される浅ましい肉欲の地獄絵図連作4本&2本+独立短編3本。情念うず巻く烈しい筆致でもって人間がその理性のタガを外し一匹の獣へと先祖返りしてガツガツ交合にふける壮絶な光景を怒濤のごとくお届けの作者最新刊は抜き物件としての通算10冊めにして黄色い楕円仕様としての第9弾、そして当レーベル物件としての2ndコミックスだ。
本稿でははじめて取りあげるけれど、この人はすでに前世紀末には作家活動を開始していた大ヴェテラン。ことに旧体制の「コミック夢雅」(桜桃書房刊)およびそのスタッフが移籍し創刊した「Comic Mujin」(ティーアイネット刊)で押しも押されぬエースとして大活躍していた2000年前後がもっとも脂の乗っていた時期だろう。しかしながらだいぶ長いこと消息を聞かずにもう廃業したのかと思っていたところいきなりこの新刊発売の報を目にしてビックリ。そんなわけで大昔にマイサンもお世話になったこの作家の本を10数年ぶりに購入してみましたよ。
さっそく我が家へ届けられたこちらを開封して、まずは過去のイメージとえらく変わった表紙絵に驚く。なんだかずいぶんいま風のスッキリしたタッチになってるじゃないですか。というのも以前のこの人は「ネオ劇画」とも呼ばれた荒々しい描線が持ち味。それが昨今の流行も適宜取り入れた滑らかな作画になっているものだから違和感バリバリですよ。ただしその印象は序盤だけで、途中から10年以上も前に掲載の過去作品が収められておりそこからはパブリック・イメージのままの山田タヒチ。巻末著者あとがきを見るとこれら未収録作の救済を主な目的としてこのコミックスが刊行された模様。そんなわけでカヴァー絵を見ただけでジャケ買いするのは危険であり、店頭見本をチェックできない環境の方は版元公式サイト内の著者別紹介ページでこの新刊でなく当社前作「アイヨク」(2004年刊)のサンプル画像を確認しておくのが吉。というのも「夕闇の女子交性」サンプルには古い絵のが載っておらず、前作画像の方がテイストを正しく反映しているがゆえ。
このなつかしさただよう旧作パートと新規作画分と、いずれも登場ヒロインはハイティーン巨乳女子固定。といっても古い作品では心持ちおっぱいサイズひかえめで、近年のエロ漫画界全般における爆乳シフトを同一作者の比較において見てとれる仕掛け。ルックス的にはキュート寄りながら独特の黒目がちな瞳の処理は昨今流行りのそれとはだいぶ乖離したタイプで、最近になってからエロ漫画を読みはじめた若い層には受容のハードルになるかも。
物語の方も新作/旧作でそれぞれテイストの違う2層構造となっている。まず冒頭からの直近執筆分は関連性のない単発読み切り3本で、ガチ凌辱ありコミカル3Pありのアラカルト料理。そして2004-05年にかけ集中掲載されたものが収録された中盤以降は変則的な構成ながら全体を通じ「ウツボカズラ」という名のシリーズとなっている。地味な少年少女が建物の陰で人目を忍び情事に没頭する前後編、我を通さず積極的に人助けする好青年がにわかに変貌し本性をむき出しにする連作4話、教師に侵され続けるうち心を病んだ女生徒が延々と刹那的なファックをくり広げる別の連作2話……いずれもどす黒いリビドーがむき出しにされ殺伐とした欲望だけが行き交う陰惨とした展開で、読んでるこっちまで読後に鬱々と心が塗りこめられること請け合い。ただ前記のあとがきでも述べられているが、諸事情あって作者自身が中断したとあるとおり、この陰鬱な物語は特段の解決がなされることなく道なかばでそのまま放置される。それゆえに随所でしばしば反復される食虫植物・ウツボカズラのモティーフが最後どのように収束するのか我々には判然とせずモヤモヤが残ってしまうのだ。おそらくこれまで単行本化されなかったのもその未消化感が原因だと思うが、そんなわけでお話にある種のカタルシスを希求する向きには積極的にオススメできかねることをあらかじめお伝えしておく。
1本あたり16-20ページとかなり容量はタイトながら、かつてTIのハードコア路線を牽引したその実力は掌編でも遺憾なく発揮される。ことに女子連中の常時おびえたような表情が本番突入後狂おしく乱れメスの顔へと変貌するさまが読者の内なる嗜虐心を刺戟し股間の高揚に貢献。加えてこの作家得意のえげつない性器結合部ドアップ&ド派手な液汁まき散らし描写も昔お世話になったときの記憶そのままに怒濤のごとくくり広げられるのだが、この部分は現在のコア物件の宿痾とはいえ大きめの黒ノリ修整でだいぶ減殺されるのがつらいところ。山田タヒチ特有のデカクリ屹立が黒々と隠されてしまうのは挽回し得ないマイナス点でここは残念無念。そうはいっても新作パートでは昨今流行りの性器断面図やアヘ顔描写など最新トレンドも積極的に取り入れていて、この作家が決してマンネリズムにおちいらず前進を続けている事実を確認できたのは収穫だ。
いにしえの思い出は色あせることなくさらには今後に向けての楽しみもできてうれしく思ったものの、2018年発売のエロ漫画単行本として純粋に評価すると古めかしいタッチやキツめの消しはやはり減点要素となってしまう。とはいえコレクターズ・アイテムとしては初出一覧も完備しておりその目的で購入するのなら太鼓判のできばえ。なお現在はコアのほか一水社で熟女系主体に執筆しているようで、去年はオール新作の単行本も上梓しているとのちにググって知り自分のもの知らずぶりに恥じ入るばかり。そんなわけでアダルトさん中心のはともかくJKネタならば次作以降の山田タヒチ作品を積極的にチェックしていきたい所存。マイちんこ的には新しめのお話のがやはりうれしくて、同級生男子との逢瀬を担任教師に目撃されたヒロインが中年男のちんこに屈する冒頭短編「奪われカノジョ」がfeel so good。

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