2019-01-31

本日の終末思想。

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-美矢火「色めき出す世界」文苑堂 ISBN:9784861173134
話◎-○ 抜○ 消小 総合○

灰色の日々から2人して逃げ出した中年男と少女の行く末は……前後編+独立短編4本。無邪気だったりワケアリだったり多種多様な男女の純愛模様を流麗なヴィジュアルと熟達のストーリーテリングの両輪でもってお届けの作者最新刊は通算4冊めにしてこの版元からの3rdコミックスだ。
老舗のエロ漫画誌に伍し2010年代に入って創刊の新規参入組ながら、この出版社が世に送り出した「コミックバベル」はすっかり世間に定着。そんな同誌のスタート時点から現在に至るまで主力作家として活動を続けるのがこの人。執筆ペースもけっして爆速ではないながらも堅調で、2016年末に発売の前単行本「純愛リリシズム」からほぼ2年ぶりでこの新作リリースとあいなった次第。
エロ漫画らしからぬ……と言ったら失礼かも知れないが、なにやら一陣のさわやかな風が吹き抜けそうな清涼感のある表紙に思わず胸キュン(死語)。中身のタッチも端整かつ完成度の高い滑らかな作画で、明らかに現在この業界で主流のテイストとは異なるけれどもそんなのはまったくハンディにならない美しさだ。以前に別分野で長く絵の仕事をしていたのをカミングアウトしていたのでそちらでのキャリアが存分に反映されているのだろう。すべて直近2年以内のバベル執筆分と最新原稿ばかりゆえそのクオリティも非の打ちどころなし。なお出版社提供のコミックス情報ページや作者pixivアカウントの発売告知エントリから試し読みやサンプル閲覧が可能なので、美矢火に関する予備知識皆無の方はまずそれらをチェックしておくのをオススメ。
このおそろしく高品質なお筆先から生み出される女性陣は作中描写からおそらくはハイティーン専科で、キュートネス炸裂のお顔にまるで泰西名画のごとき完璧プロポーションの肢体が組み合わされた神の造形だ。おっぱいは充分すぎるほど大ぶりなのに腰は折れそうにか細く、そこからまた急激に肉づきのよい下半身へと伸びてゆく蠱惑的なボディラインには「ほぅ……」と嘆息するほかない。かくもパーフェクトな体躯とは裏腹にキャラ造形の方は喜怒哀楽のメリハリも効いたガール・ネクスト・ドア風の親しみやすさで、こうした落差もまた美矢火ヒロインならではの魅力。
美麗な作画のみならず、ときには軽やかにときにはしっとりと緩急自在のお話運びがこの作家のストロングポイント。掌編からロングラン作品まですべて1on1のタイマンラヴを貫き、紆余曲折ありつつも最後は心身とも深くつながり真摯に愛し合う彼氏彼女のピュアエロスをたっぷりページを費やし活写だ。10代女子固定の女性陣に対し相方たる野郎キャラは同世代からオッサンまで多種多様なのだけど、前作あたりからにわかにフィーチャーされ出したのが退屈なルーティンワークに疲れた中年男性。今回は唯一の長尺もの「逃避行」がそれにあたり、お互いままならぬ事情を抱えた少女と大人がそれらをうっちゃり衝動的に営業車で走り出し温泉にしけ込んで愛欲の限りを尽くすさまを描き出す。随所に回想シーンをはさみながらていねいに織り上げられる年の差カップルの純愛と肉欲との相克はやがてクライマックスに達したのちさわやかに締めくくられるのだが……それについてはぜひご自分の目でご確認を。
新刊の宣伝漫画的扱いの巻頭掌編「セーラー服着ろってバカなの!?」を除けば1本あたりみな30ページ以上の大ヴォリュームで、当然のごとくエロシーン密度も相応に高め。各種エロ演出をもれなく装備しながらも清冽なタッチのおかげで濡れ場にもほのかな上品さすらただよう。美矢火謹製の完璧ボディが画面狭しと入り乱れるなか日常のアルカイック・スマイルを娼婦のごときアクメ顔へと変貌させながら最愛の彼に抱かれイキ狂うドスケベヒロインズの痴態を存分にフィーチャーだ。
ときにすれ違いネガティヴな感情をぶつけ合ったりもした2人だけど、本当の気持ちを確認したのちはもう誰彼はばかることなくイチャイチャモード。生まれたままの姿で抱き合い互いの身体を密着させながら敏感な部分をまさぐるとたちまち甘い吐息。執拗な愛撫によりすっかり準備万端の蜜壷へ屹立したシャフトをねじこみ性器どうしのランデヴーを開始だ。激しく怒張を打ちつけるたび身をよじらせ涙ながらにハートマークをばらまき快感に没頭するさまがいとおしくもエロっちい。いよいよ感極まりラヴワードを乱射しながら昇りつめてゆく彼女の子宮の最深部めがけ最後に怒濤の勢いで白くねばつく漢汁を叩きつけフィニッシュ。
男女ともに揺れ動く心中をセリフのみに頼らず巧みなコマ割りとメタファを用いつつ描写してゆくストーリーテリングと、愛し合う同士結ばれる高揚感をダイナミックに押し出す画面構成の妙とで抜き用途のみならず漫画作品として充実した読後感を得られる逸品だ。前作に引き続いてのオッサン推しは巻末著者あとがきを見るに編集主導のようだが、たしかにエロ漫画購買層の高年齢化が著しいなか読者のシンパシィの対象としてこれを押し出したくなるのはわかるし、実際美矢火はこれを透明感あふれる純愛作品へと昇華できてしまうのだからさもありなん。ただそればかりだと胸焼けするし、この作家の描く軽妙なラヴ模様も自分は大好きなのでそのへんのさじ加減はバランスよくしていただければ。そんなわけであいかわらず砂上楼閣でありながら確固たるリアリティを持って提示されるJK×中年男のロード・ムーヴィ「逃避行」を必読として挙げつつ、同時に冴えない男性教師と無邪気な教え子との甘やかエロス短編「ブサメンがカワイイ彼女をゲットする方法」を大いにプッシュですよ。

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