2019-03-02

今月のディフェンスライン。

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-おそまつ「あの娘の境界線」ワニマガジン社 ISBN:9784862696236
話○ 抜○ 消小 総合○

見知らぬ同士からはじまる濃厚ラヴ姉妹饗宴連作2本+片思いの男子に誘われ内心ときめく生真面目委員長は卑劣な企みにより肉便器へと堕ちてゆき連作2本+独立短編5本。タナボタエロスから報われぬ悲恋まで多種多様な愛のカタチをセンシティヴな筆致で描き出しつつウェッティなストロングファックの奔流を怒濤のごとくお届けの作者これが記念すべきファーストコミックスだ。
同じワニマガジン社物件といってもコンビニ売りということである種の抑制が加わる「COMIC快楽天」系列に比べ書店ルート専科ということでだいぶ自由度が広がるのが当社唯一のガチ成年誌「コミックゼロス」。必然的に執筆陣も快楽天3誌よりいっそう幅広い個性が集いなかなかにカオスだ。そんなさなかゼロス編集が自信を持って送り出すのがこの人。実際にはまっさらの新人というわけではなく薄い本などもモリモリ描いているようなのだけど、それだけにしょっぱなからウェルメイドな作品がそろっておりますぜ。
いささか不穏な空気のなか女の子が切なげにこちらを向きたわわな肢体をオープンセサミの扇情的な表紙がまず目を惹く。中身のモノクロ原稿もカヴァーに準じた繊細なタッチで、細めの少々ザックリした描線でつむがれるそれは典型的なエロ漫画絵とは微妙に雰囲気の異なる、美大漫研とかコミティアとかそんな場にいてもおかしくないイメージ(こなみかん)。さっそく収録作の初出を確認すると2016-18年にかけてのゼロス掲載分に加筆修正をほどこしたものとのことでクオリティも高値安定だ。なお出版社提供のコミックス情報のほか、著者みずから作成の気合いが入った単行本特設ページから各ショップ購入特典やサンプル画像を参照可能なので、あわてて書店へおもむく前にそちらのチェックをオススメ。
このたび登場の女性陣は年のころ推定ミドルティーン~20代前半附近とエロ漫画購買層の最大公約数的需要をキッチリフォロー。いまどきの潮流に準じ巨乳多めではあるものの、目を疑うようなエクストララージバストではなくわりかし現実的なヴォリュームなので「もうオバケおっぱいはイヤだ!」という向きには大いに推奨。そんな彼女らはそのどこか影のある絵柄にふさわしく大半はひとクセある造形で、すなおになれなかったり笑顔の奥へモヤモヤを抱えていたりやたら自暴自棄だったり若干病み気配。まあそんな傾き具合こそがこの人ならではの得がたい個性なので自分としては「いいぞもっとやれ」ですよ。
おそまつ漫画の独自性がもっともきわ立つのがその作劇において。わずかに乱交があるほかは基本的にタイマンエロスの構図となるのだが、そのありようはまことに多彩。甘やかな恋模様から救いレスの堕ちものまで、最後ギャフンオチのアホエロありやるせない肉欲の隘路ありとヴァラエティ豊かに描きこなすさまは新人離れした技倆を感じさせる。とくに男女とも本当の思いとは裏腹に互いを傷つけてしまうこじらせ系の愛憎劇をやらせると白眉で、じつのところ共依存の2人が神経を切り刻むかのようにマイナスの感情をぶつけ合いいっそうハートをねじくれさせてゆくさまにゾクゾクさせられるのだ。
むき出しの気持ちの衝突から濡れ場へと突入するのだからその交合ぶりはまことに激しいもの。1本あたり18-24ページのそう多くない容量のなかでも直截的に体躯をぶつけ合うかのようなセックスはストロング&ダイナミック。性器どうしハードに合従連衡しながら2人して肉食獣のごとく咆吼をあげる荒々しい情交ぶりが浅ましくも淫猥でたまらない。理性など捨て置き本能のまま貪欲に互いをむさぼり合う肉欲曼荼羅が読み手の脳裡を完全支配する。
愛という憎悪を目の前の男からぶつけられ彼女の体躯は玩具のごとく乱暴にもてあそばれるのだ。頭を押さえつけられ強引に怒張を口内へねじこまれ無神経に精を注がれる。休憩など許されずこんどは牝臭を発する蜜壷へ屹立したままの男根をゴリゴリねじこまれ粘膜も破けんかの勢いで激しく内奥を貫かれ、その都度目もくらむような快感に脳髄まで染められ四方八方へ淫語乱射。日本語にならない意味不明な嬌声をまき散らしながら汗だくの肢体を打ち震わせるヒロインの淫乱まんこの最深部めがけ最後に粘度の高い白濁を大量に叩きつけ性の饗宴もようやくグランドフィナーレ。
ママゴトティックな恋愛模様に背を向け淫靡で背徳的な性の愉悦に耽溺する浅ましき衆生のありようを浮き彫りにする渾身のデビュー作。ただ作風的にコミカライズなどではなく本格オリジナル要員として一般誌に青田買いされそうで心底不安なのだけど、もうしばらくは成年向けのフィールドにとどまり我々を楽しませてもらいたいもの。今回収録もれの作品もあることだしせめてあと1冊はコミックス刊行にこぎ着けていただければ。硬軟自在の作品群いずれもおもしろく読ませてもらったが、女友達に爆乳メガネ妹ちゃんを紹介された主人公が彼女の大胆な献身ぶりに無条件降伏の「手繰り網」がライトサイドの、想い人から仕組まれた罠によりヒロインが不特定多数の精液便所へと転落してゆく「あの子の夏の思い出に」/「あの子の冬の温もりに」連作がダークサイドの、それぞれ最愛物件。

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