2019-10-12

本日のノザキコンビーフ。

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-牛野缶詰「いろはにほへと」コアマガジン ISBN:9784866533674
話○ 抜○ 消小 総合○

清楚な少女や貞淑な美女が想い人の前でだけ淫靡な艶姿をあらわにし短編11本+ヒロイン全員集合巻末おまけ漫画。鮮烈かつ頽廃的な筆致でもって純粋な愛とそれとは裏腹の浅ましき男女の肉欲曼荼羅とをともにヴィヴィッドに描き出す作者これが記念すべきファーストコミックスだ。なおペンネームは特段ひねることなく「うしのかんづめ」と読ませます。
なんだかんだで前世紀からエロ漫画を読みつけているとすっかり精神がスレてしまいたいていのことには驚かなくなってしまっているのだけど、この作家をはじめて「COMIC快楽天」(ワニマガジン社刊)で目にしたときは「なんだこりゃ!?」とひさびさに大きな声が出てしまった。それくらい現在主流のエロ漫画文法とは明確に異なる絵柄と作劇とで周囲の執筆陣からも当然浮きまくり。いったいこの人はどこへ向かっているのだ……とその動向を注視していたらしばらくのちこんどは突如誌面から消えてしまいまことに意気消沈。それがどういうわけか河岸をコアマガに変えて即座にコミックス発売にこぎ着けたものだから驚くやらうれしいやら。矢も楯もたまらず発売日とともに書店へ直行した次第。
表紙をひと目見たそのときから牛野缶詰が普遍的な成人向けエロの範疇を軽やかに飛び越えてゆく作家であることがハッキリわかる。さすがに中身のモノクロ原稿はここまで露骨にお耽美ではなく適度にオタナイズされた雰囲気ではあるものの、直近執筆の原稿ほどオーソドックスな漫画絵から離れていってこの先アート方面へ旅立っていきそうで心配。巻末の初出一覧によれば発売元のコアマガで描かれた原稿は「コミックホットミルク」直近掲載分の3本のみ、残りはすべて2017-18年にかけ前出の快楽天に載ったもの。いきさつはさておき当初からきらびやかかつ完璧なデッサンでありヴィジュアルの完成度では初登場時ですでに業界上位クラスだろう。まだアップが間に合っておらず版元サイト内の著者別情報ページにはサンプル画像がないが、表紙/裏表紙のみ見ての衝動買いでも期待を裏切られるようなことは絶対にないはずだ。
この美麗きわまりないお筆先から生み出される女性陣は愛らしいのから妖艶なのまで、バストサイズもささやかだったりド迫力だったりまことに多彩。ティーンズはむろんのこと大人女性でも比較的キュート寄りの造形で熟女スキー向きとは言いがたいが極端に設定年齢との乖離はないので誰が読んでも違和感は少ないはず。それより野郎キャラの方が男子用成人作品としては異例の露骨にBLティックな描き方で、目鼻立ちクッキリにごっつめなアゴのラインのコーカソイドまる出しなイケメンぞろいの光景は一般的なエロ漫画を見慣れた身にはなにやら別の国の住人たちのようですな。ともあれ美男美女勢ぞろいのなんとも眼福な作画には思わず引きこまれるパワーがみなぎっているのですよ。
お話の方はその絵柄ほどゴリゴリに尖ってはいないけれど、やはり牛野缶詰ならではの独特なアトモスフィアがそこかしこから立ちのぼってくる。すべてコンビニ売り誌掲載分ということで穏健な和姦ベースの作劇ながら、崇高でいてどこまでも淫猥な性の深淵を随所にのぞかせる個性豊かな作品世界がくり広げられるのだ。やや硬質かつ端整な描線には詩的な科白まわしや印象深いコマ割りがことのほか映え、ときにちんこを握るのを忘れ画面のなかに見入ってしまうのは抜き物件としてはいささか困りもの。ことにどこか浮世離れした海外文学の短編みたいなお話をやらせると白眉で、2人だけのクローズドな空間でひたすら我を忘れ肉欲におぼれる彼ら彼女らの生々しい行状を活写。
白磁のごとき滑らかな肢体をフル活用し茂みの奥へ幾度も白濁注がれて絶頂のエロシーンは特濃とまでは言わずとも業界水準以上を確保。1本あたり18-26ページと分量はさまざまななかストーリーパートにも潤沢に尺を割くだけにけっして性交オリエンテッドではないけれど、お肌を朱に染め荒い息を吐きながら覚えたての愉悦に没頭するヒロイン連中のとびきりの艶姿に読み手の股間はおっきしっぱなし。とりわけ随喜の涙を流し日本語にならない嬌声たれ流しながら昇りつめてゆくアクメ顔描写は絶品であり、許容量オーヴァーの孕み汁を仕込まれたのち膣口からコポッとそれが逆流するさまを見つめつつなおも上気し行為の余韻にひたる彼女らの得も言われぬ表情でまたしてもエレクチオン。
あらかじめ結ばれる運命の2人は夜も待ちきれず褥へダイヴインしては互いに熱く激しくむさぼり合う。肌を重ねタイトに抱き合いながら敏感な部分をまさぐり合ううち体躯は火照り準備万端だ。濡れそぼつ蜜壷をいきり立つ怒張で描き分けながらいちばん深い部分まで突き入れ性器どうしの真剣勝負をスタート。執拗にストロークを刻むたび呼吸を荒げほおを紅潮させながら四方八方へハートマークをまき散らし全身全霊で快楽に熱中するさまがいとおしくもエロっちい。いよいよ感極まりイクイク連呼のヒロインのドスケベまんこめがけ最後に特濃ザーメンの奔流をお見舞いだ。
いちど目にしたら2度と忘れないその清冽なタッチとそれにふさわしくどこかバロキッシュな作劇とが唯一無二の世界をつむぎ出すまことに印象深いデビュー作が爆誕。版元の雑誌たるホットミルク初出分より快楽天掲載のものがはるかに多いというのはむろんワケアリなのだろうが、紆余曲折ありつつも原稿をすみやかに譲渡したワニ編集に感謝し、自社分とあわせ非常にクールなパッケージングを構築したコア編集にありがとうを言わせてもらう。バックグラウンドを調べてみるに一般誌でのお仕事もあるようで今後どれだけ成年漫画界へ滞在してくれるかわからないけど、引き続き独自の牛野缶詰ワールドをくり広げ次回作刊行までしていただければ重畳きわまりない。収録作のなかではベストセラー作家の幼な妻としてヒロインが家事でも性事でもけなげに奮闘の「家桜」と、黄昏れた世界に降りしきる雪のなか年長女子×年少男子カップルが寸暇を惜しみ交合に没頭「あさって」が私的お気に入り物件。

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