2010-05-01

今季のファミリーシリーズ。

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-田沼雄一郎「エロコメ」ワニマガジン社 ISBN:9784862691231
話○ 抜○ 消小 総合○

ドSショタ×ドM大女のゆがんだ愛情連作2本+短編10本。勢い勝負のぶっとい描線を軽妙洒脱に滑らせながらケレンだらけの独創的な物語世界でフィジカルなド迫力ファックをくり広げる作者今年に入っての2冊め。
表紙の女の子の顔つきや彩色がこれまでとだいぶ違う印象なので一瞬とまどったが、ページをめくればおなじみの田沼雄一郎印が全開で安堵。絵柄の同定については裏表紙の背景になっている執筆原稿からのカット抜粋を見る方が確実だ。
ふだんコア系メインのこの人が快楽天に他流試合を挑んでものしたのはタイトルどおりのオーソドックスなエロコメ……になるはずもなく、一見定石どおりのお話もクセありまくりなキャラ造形と周到なストーリー的仕掛けを振りかけたらたちどころにワン&オンリーの田沼ワールドへと変化。表面的にはどの作品も現代日本が舞台のありふれた日常ばかりなのだが、男と女それぞれの思惑/欲望が水面下で入り乱れ絡みあうさまをキッチリ描ききることで書き割りに堕さない重厚な人間模様を表出させてみせる。
それを語る手段として随所でのモノローグだけでなく濡れ場自体を援用しているのがヴェテランならではの技。いびつな愛のありようを支配/被支配の性行為を通して表現したり、あるいはセックスの際の視線の行方でいままさにつながっているはずの2人の距離の隔絶を暗示したり、肉体のみで雄弁に語らせる彼の技法は漫画というジャンルの持つ威力を示す格好のサンプルだ。
まあ堅い話は抜きにしてもピチピチの青い果実にはじまり熟れすぎの妖艶な牝に至るまでゴージャスな女体めがけゴリゴリと暴れん棒を撃ちこむ肉弾戦の連鎖を胃もたれするまで堪能できることに違いはなく、タッチに抵抗がなければぺたっ娘嗜好以外たいていの方々の欲望へ対応可能。
個人的には冒頭高校演劇部2作のティーン女子や同窓会ネタ「らんなうぇいラバーズ」のちんまり巨乳OL二ノ宮さんみたいなカワイイ系ヒロインが好きなのでおばさん志向が強まっているのは不安なものの、コクのある作劇と作画とをダブルで楽しめる逸品。

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