-藤宮博士「少女の飼い方・しつけ方」オークス ISBN:9784799001288
話○ 抜△ 消無 総合△
些細ないさかいから家出した少女が公園で出会った男の部屋に招かれてはじまった調教地獄表題作長編。純真無垢なヒロインから人間の尊厳の一切を奪い去り一匹の性奴隷として仕立て直すプロセスの一部始終をヴィヴィッドに描き出す作者6冊めのコミックスはこの出版社からのセカンド。
のっけからヤバげな匂いを発散しまくる表題およびカヴァーイラストがもたらす予感のままに、中身も救いレスな人権蹂躙フルコースがエンドレスでくり広げられる。今世紀初頭からとけっこうなキャリアを持つ作家だけにタッチはいささか古典的ではあるものの、繊細かつ流麗な描線で描かれる儚げな雰囲気のヒロインはなかなかに魅力的。それだけにそんな彼女が人格のすべてを否定され畜生道に堕ちてゆくさまがなんとも凄惨なのだ。
幼なじみ3人組の止むことなき愛憎劇である前作「絢トリ」に引き続き、今作も負の感情のみを全開にしてひたすら破滅へと突き進む鬱度100%のガチンコ凌辱が展開される。さらにこちらは受難の矛先が拉致られヒロイン・舞衣華ただ1人にひたすら降りかかってゆくのでより壮絶度アップ。主犯である孤独なリーマン・杉浦のけた外れな妄執を一手に引き受ける彼女の気高きディグニティが原形をとどめぬまでに破壊されつくす光景を余すところなく堪能できよう。
お話的には調教開始からその成就までの一本道ストーリーゆえ特筆すべきものはないが、そこにインサートされるSM満漢全席の調教メニューの多彩さには思わずため息。オーソドックスな器具拘束にはじまり電気刺激に言葉責め、排泄強要からおしおきプレイと縦横無尽のいたぶりようだ。ほぼ一面識もない少女を痛めつけ隷属させてわずかばかり残っている感情までをも完璧に摩滅せしめるハードSMの極致に日頃の鬱屈した気分も2次元の世界ですみやかに開放されるはず。四肢の自由を奪われ言葉すら発せない舞衣華の必死の懇願をことごとく無視してさらなる過激な責め苦を強要する杉浦の悦楽に満ちたアルカイック・スマイルに読者の内なる悪魔も微笑み返し。
逃亡を試みたり差し出された指を噛んだりと序盤では発揮できていた彼女の反抗心も終わることのない監禁生活が続くうち絶望へと変容する。無理やり花開かされた性の快楽に自分からおぼれてゆくことでなんとか精神の平衡をはかろうとする後半部では放尿も脱糞もなすがままにまかせついにはボテ腹プレイのさなか完全なる精神崩壊へと到達。白目を剥き全身をヒクつかせる舞衣華のただれきった性器へ飽くことなくザーメンを注入し続ける薔薇とワインの日々はしかし思わぬ形で収束を迎えるのだが……結末はぜひ貴方自身の目で確認を。
延々続くヒロイン調教譚という意味ではちょうど昨日レヴュウしたばかりのマイノリティとまったく同じなのだが、そのかもし出す空気といい読後に残る余韻といいまるっきり正反対なのがおもしろい。もっともSM漫画としてはこちらこそが正統的でマイノリティのアレは間違いなくレアケースではあるのだけれど。プレイの多様性に対する寛容度の乏しいヘタレな俺はいくらか受け入れがたいネタもあり若干抜き評価を落としてしまったのだが、ギャグや暗喩に逃げずストレートに人権侵害しまくる作者の誠実な筆致には好感。倒錯行為のあれこれを赤裸々に伝えるべく無臭性が貫かれた画面構成も素敵で、本格調教ものに飢えた君の寂寥感をきっと解消してくれるに違いない。
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