-田中ユタカ「初愛」竹書房 ISBN:9784812477458
話○ 抜△-× 消大(詳細性器描写なし) 総合△
はじめての夜/はじめての朝を迎える恋人たちの甘く激しいラヴ・アフェア短編9本。マークなし。純愛カップルのもどかしくも甘酸っぱい情景を描かせれば日本一のこの作家ひさしぶりの抜き物件だ。なおこちらは本来2月下旬発売のものを少々遅れてレヴュウしていることをあらかじめお断りしておく。
出自こそエロ漫画ではあるものの今世紀に入ってからは一般誌での活動が目立っていただけに、もっぱらちんこの慰安に貢献するアイテムのみを取り扱う当ブログではなかなか取り上げる機会のなかった人。たしか最後に言及したのは2006年夏に出た「愛しのかな」の1冊めだからじつに5年半も前のことになる。
ザックリした少年漫画系の描線を用い、愛らしい丸顔にこれまた丸っこい瞳のガール・ネクスト・ドア風ヒロインをバリバリ量産するというデビュー以来の大まかな特徴はいまも変わらない。しかしながら歳月の経過とともにキャラの表情はずいぶんリアル寄りになり3次元を引き写したみたいな造形になった。よく言えば漫画文化にさほど漬かっていない層にも受容しやすく、意地悪な表現だとオタっぽさが薄れリア充向けになった印象。個人的にはもう少しあざとく萌えっぽい絵でもいいのになあと思ったり。
そんな画風の変化に加え掲載誌のレギュレイションの都合もあるのか、今回女性陣は一部の回想シーンを除きみな推定18歳以上の立派なレディ。男子サイドもつられて年齢アップしているので、初期作品で頻出していたような中高生カップルのイチャイチャ模様などは期待せぬよう。もっとも男女のお歳が上方向へシフトしてもやってる内容はあいかわらずおんなじなのだが。
すべて1話完結読み切りとなる収録作品群はいずれもこれぞ田中ユタカ印の彼氏彼女セックスはじめて物語。さすがに年齢がかさ上げされたこともあり全部が童貞/処女の初体験ストーリーとはいかないが、神聖な儀式に向けて昂ぶる心やら行為のさなか2人して絶頂に達する際の得も言われぬ全能感やらをあふれんばかりの独白によりヴィヴィッドに描き出す独自の手法が冴えわたる。
もとよりちんこまんこの詳細描写をほとんど行わない作家ゆえ性交シーンにおいては隔靴掻痒感を免れ得ないけれども、前述のごとく随所で噴き出すモノローグの奔流や女の子が快感に身もだえする光景をさまざまなアングルから捕らえる画面切り出しの妙などによる導入からフィニッシュに至るまでのシークエンスの盛り上げはたいしたもの。臆面もなくラヴワードを叫びあい性器どうしをジョイントさせる喜びを体感しながらクライマックスへ向け一直線に加速してゆき、シメは大ゴマ使って女の子のやり遂げた感いっぱいなアクメ顔をフィーチャー。事後呼吸を荒げたままクタッと横たわりつつもういちど肌をくっつけてきてニッコリと微笑む彼女の神々しいまでの表情に読んでるこちらもニヤニヤが止まりません。
物理的にシャフトを駆動するのには濡れ場密度的に少々もの足りなく、そのため抜きファンダメンタリズムが支配するこちらではやや評定を下げてしまった(作者さますいません)。しかしながら男子女子の熱愛ぶりをこっ恥ずかしいまでにクローズアップする数々の演出はますます洗練の度を増しており、イチャラヴ成分不足に悩む貴方には格好のサプリメントとして摂取を強くオススメ。世間の潮流など関係なく普遍的な純愛を確信犯的に描き続けるこの作家の健在ぶりを久々に見せてもらった1冊だ。今回収録のものでは意地っぱり太眉っ娘のツンツンぶりが徐々にとろけてゆくさまがグッドな「はじめちゃんの強がり」がマイフェイヴァリット。
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