-ハッチ「うさぎのこえ(上)(下)」ヒット出版社 ISBN:9784894655652 ISBN:9784894655669
話◎ 抜○-△ 消小 総合○
低所得世帯の住まう高層アパート街を舞台に少女ら少年らのさまざまな性/生のありようを克明に描き出す表題作オムニバス14話+戦火を避け2人きりでこもったシェルターで兄と妹はさびしさを紛らわすべく身体を求めあい前後編。やるせない現実に沈みながらもわずかばかりの光明を見いだしそれを心の支えにして日々を暮らす人々の姿を称揚するでもなく侮蔑するでもなくニュートラルにつづってゆく作者最新刊は2冊組の堂々たるヴォリュームだ。
前単行本「セクロス」の発売からはおよそ2年といささか間隔が空いたが、それはひとえにこの大作を一気に刊行するべくタイミングを見計らってのこと。むろん上下巻セットで評価をしないと意味のない物件なのでこちらはいっしょに扱います。なお巻末著者あとがきによると今回の2冊で通算10冊めのコミックスになるとのことだが、俺が手元で集計したら9冊になるのでおそらく作者的には新装版1冊も込みでカウントしているのだろう。
大まかには少年漫画起源なのだと思うが、硬くソリッドな描線とおでこや髪の一部がやけに肥大化したクセのあるデッサンとでつむがれるその絵柄は他に比較できるもののないワン・アンド・オンリー。カラーパートは例によって外部委託のヒット塗りゆえ独自性が薄れてはいるものの、白黒原稿での水晶の原石を切り出したみたくエッジの立った瞳の処理がきわめて印象的だ。
幼女からおばちゃんまでなんでも描ける人だけれど、今回は表紙が示唆するように小学校高学年あたりのちびっ娘メイン。地味なルックスとオドオドした性格からイジメの標的となっている表題作メインヒロイン・真綾とそのクラスメイトを中心に彼ら彼女らの家族だとか近隣住人など周囲の関係者一同が各回代わる代わるスポットライトを浴びる群像劇の形式を採る。
これまでも高層住宅を舞台にした作品を多く描いてきたこの人、今回は作品中でも著者解説でも明らかにしているようにハッチの実体験をベースにしたロウワー・クラスの生活実態をそれら団地群に仮託し余すところなく表現。ゆとりのない殺伐とした暮らしとそれゆえに子供までもが心身をすさませる情景が作品全体の雰囲気をずいぶん刹那的なものにさせる。子供も大人もそろって強きが弱きをくじき溜飲を下げる醜悪なヴィジュアルはほのぼの萌えエロに慣れた諸兄には劇薬にほかならない。それでも作者自身「苦労した子にはハッピーエンドじゃなきゃいけない」と述べているだけあり、締めくくりは前途に希望を持たせる描き方になっている。そう言いつつもいっそうシリアスな宿命を背負った次の世代をすぐに登場させるあたりがこの作家の因果な性分ではあるけれど。
かくしてくり広げられるセックスのほとんどは愛の交歓というより社会的な上下関係の確認やストレスの一方的解消といった夢も希望もないもの。さすがに最終盤にはいくばくかのカタルシスももたらされるとはいえ、ほとんどは立場が上の人間が反抗できない弱者をひたすらもてあそび蹂躙する光景が世界を満たす。ここで嫌悪を覚えず嗜虐/被虐の悦びを感じられるかどうかが本作受容のハードルとなろう。
そんな殺伐とした交わりでもいつしか快楽追求に没入し我を忘れて歓喜するのが人間のサガ。ことに多くのパートで展開される、ヒロインの未発達ボディを思うがままにむさぼれば彼女らも大人顔負けの猥褻なリアクションを返してくるストロングファック絨毯爆撃は読者の股間にビンビン響くこと疑いなし。こみ上げる快感に歯を食いしばりつつ耐ええげつないイキ顔さらして恥も外聞もなく咆吼する女子どもの媚態に辛抱たまらずJSまんこの最深部にたっぷりと白くねばつく液体を叩きつけフィニッシュ。
表紙や帯だけ見ると若干ハード志向ながらも楽しそうに小学生たちとえっち三昧的テイストなのだけれど、いざ中身を手繰るとそこにはヘヴィすぎる格差社会の現実がドドーンと。よってエロ漫画に慰安の機能を求める方には絶対にオススメしないが、この作家を継続的に読んでいる人ならこれまで以上にずっしり腹の底に響く密度の高いストーリーテリングにすっかり魅了されることだろう。登場する女の子のなかではぷにっと柔こそうなボディのお団子ヘアっ娘・由衣たんが抱き心地よさそうで自分的好みでごわす。
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