2013-08-25

今年度の北海道マラソン。

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-へっぽこくん「やわらかももぷりん」久保書店 ISBN:9784765935432
話○ 抜△-× 消小 総合△

ほわほわ笑顔のぷにっ娘どもがときに明るくときに切なく恋愛しちゃって短編全12本。ひと目見たら忘れられない唯一無二のポップでキュートな絵柄を武器に業界で長いこと活躍するこの作家最新刊は成年仕様としての第6単行本だ。
この人の最初の活動のピークは2000年代初頭で、そのころから未来的というか人工的というか誰とも似ていない独特なぷに絵を描いていた先駆者的な存在。いくらか変遷はあるものの現在でもそのスタイリッシュなタッチはまったく古びていないのには驚嘆のひと言。途中にまったくコミックスの出なかった時期がありはしたけれど、非成年向け単行本を1冊はさんだのち去年2月に前作「メッセンジャーズ」をリリースしてから本作までは1年半とわりかし短いインターヴァル。
前単行本は1冊まるごと長編だったが今回は1話完結ものばかりを収録した拾遺集的なそれ。巻末著者あとがきによると新旧さまざまな作品が集まっているらしいのだが、収録作についてのデータがまったく付属していないので執筆時期も掲載媒体もわからないのが難点。現在の本拠地であるロリ専アンソロジー「ぺたふぇち。」の単行本紹介でも「ぺたふぇち。以外の作品を集中的に収録。」と書いてあるのだけれど、そんな表現されても具体的にいつどこに載ってたのかを明記してくれないと意味ないんだってば!(怒)
まあそういうお仕事は漫画家じゃなく編集者の領分なのでこれ以上はブーたれないが、ともあれそんなわけで作画には若干のばらつきがあり統一感では前作の方が上。とはいえロウ~ハイティーンの思春期真っ盛りガールズを全面フィーチャーの作風には変化なく、心もち胴長で起伏少なめの滑らかな肢体描写もあいかわらずだ。きわめて抽象度の高いこのタッチを10年以上前に完成させていたへっぽこくんの先進性には脱帽するほかない。
物語は現代日本を舞台にしつつすこしふしぎテイストの軽SF的モティーフを散りばめた独特な雰囲気のもの。とりわけ夢や記憶といった心的事象を媒介にしたストーリーが多く、これは前作長編とも共通したアトモスフィア。基本的には口当たり良好なラヴコメでありながら随所にほんのり苦味を附加するセンシティヴな物語展開が心地よい。一部ヘヴィなお話もあるけれど、シメでコミカルに落としたりヤバすぎる領域に踏みこむ前で語りを止めたりと読後感を悪くしない工夫がこらされている。
昔から百合専科のこの人が「メッセンジャーズ」ではノーマル男女H主体で描いていてビックリしたものだが、今回は収録作の半分くらいレズものなのでオールドファンは安心せよ。個人的には百合ネタだとまったく勃たないしカラミすらない作品も存在するので抜き度はガクンと下がってしまうのだけれど、もとより実用を期待して買う作家ではないのでそこは納得している。へっぽこくん独特のスレンダーボディが入り乱れるほんわかした絵ヅラが横溢するさまを眺めているのもそれはそれで快いものなのですよ。
滑らかな筆致でものされる華奢なトルソをくねらせながら少女たちは未曾有の快感に直面しほおを紅潮させる。汚れなきスリットをこじ開けられ優しく陰部をまさぐられて彼女らは随喜の涙を浮かべはじめての絶頂を迎えるのだ。貝合わせで達し男根挿入で達し、ニンフェットは大人への階段をまた1歩踏み出す。
元来ストーリー優先でエロは二の次であり、まして私的地雷要素である百合プレイを豊富に含むこの単行本は膣内射精原理主義の当ブログではどうしても採点が辛くなる(作者さま毎回すいません)。にも関わらずまいど新刊発売日を待ちこがれむさぼるように購入するのはひとえに得も言われぬ透徹したヴィジュアルと上質の叙情をたたえた作劇に惹かれるがゆえ。前作に引き続きたいへんセンスのよいカヴァーデザインも魅力的で、たまには摩擦運動をひかえめにオンリーワンなへっぽこくんワールドの余韻にひたるのもよいものだ。収録作のなかではリストラ後ダメニートと化した主人公が過去を追体験するうち意を決し立ち直る「RE:BOOT」と、バカップルのただれたホリデイ・ライフをヴィヴィッドに描写の「休日の過ごし方」がマイフェイヴァリット。

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