-ハッチ「いもーと未成熟」ヒット出版社 ISBN:9784894656024
話◎-○ 抜○ 消小 総合○
同じマンションに越してきたあこがれのバンドのヴォーカル宅に入りびたる妹とそれを陰から心配する兄と2人の心の葛藤の行く末は……中編3話+不審な行動に走る兄を押しとどめるべく妹はある決意を本編&カヴァー下後日談+独立短編3本+ショートストーリー1本。禁忌の愛に苦悩する彼ら彼女らの揺れる心象をヴィヴィッドに描き出す作者最新刊はピュア新作単行本としての10冊めだ。
人間の心の闇をグイグイえぐりつつも過度にお涙ちょうだいにはせずあくまで客観描写に徹するドライな作劇が印象的なこの人、いくつかの出版社を巡り歩いたのち昨今はすっかりヒット出版社に定着。数年前から同社の看板雑誌「COMIC阿呍」でレギュラー掲載枠をガッチリ確保しており、コミックス刊行ペースも順調そのもの。
ちょうど1年前に刊行の前作「うさぎのこえ」が上下巻セットでのリリースだったのに対し今回は通常の1冊ものへ回帰。唯一の掌編「病的犯罪者」を除けば単行本タイトルが示唆するとおりの兄妹相姦ネタの作品がズラリと並ぶ。
以前は母親だの人妻だのの年長系も頻繁に描いていたのだけれど、ヒットに来てからはプレティーン~10代中盤あたりの低年齢ヒロインの登場頻度が多め。ただ比較的リアル寄りの硬質なタッチゆえロリぷに感は希薄で、帯の訴求コピーにあるような「本気のガチロリ作品」というのとは若干ノリが違う気が。ついでに言うと外注によるCG彩色がほどこされた表紙絵と中身のモノクロ原稿との印象の乖離がけっこうあるので、帯裏面の内容一部抜粋コマを参照のうえ購入可否を判断するのがベター。
ロウワークラスの希望のない生活を背景にやるせないセックスの応酬を描いた前作長編の重苦しい雰囲気を引きずりながら最初のページをめくると、思いのほか明るい感触でちょっとビックリ。のちほど読んだ巻末著者あとがきで述べられているように、今回の冒頭短編「兄妹げんか」はハッチとしてはめずらしく終始ライト基調のほのぼの近親が展開されてなにやら別の作者の漫画を読んでいるかのよう。
そうはいいながら中盤以降はやっぱり空気がズシリと重たくなって、ガチレイプだの意に反して幼い身体をむさぼられるだの兄以外の男に犯られまくるだのえげつない描写がてんこ盛り。ことに唯一の長尺もの「遥の歌」では憎しみや嫉妬といった登場人物たちのマイナス方面の感情のやりとりが延々続くのでページを手繰っていくのがいささかしんどくなるかも。またそうした作品においては男性キャラの仮面劇のごとき異様な造形が不気味さを増幅させてスリリングだ。
濡れ場もこうしたアトモスフィアを引きずって、喜怒哀楽の真ん中2つの部分が目立つ重苦しい情交がくり広げられる。血縁関係ゆえの後ろめたさ/背徳感を存分にうかがわせる沈鬱なモノローグ/ダイアローグが2人のセックスを刹那的なものにするのだ。互いに深く愛し合うほどにいっそう深くタブーを侵すことになる皮肉を痛いほど感じながら彼ら彼女らの未来のない情交はますます熱を帯びる。
同胞(はらから)たる兄の目前で身を横たえ少女はいまだオンナになりきらない肢体をオープンセサミ。男の強大な力でねじ伏せられ未成熟な蜜壷へ無理やりシャフトをねじこまれては苦痛とも快感ともつかぬうめきを発する。インセストタブーの罪悪感に打ち震えながら幼い子宮へナマでたっぷり精液を流しこまれてヒロインはたどり着いてはいけないはずの絶頂を迎えるのだ。
クセの強すぎる作画にヒリヒリするような科白のやりとりや殺伐としうるおいのない交合シーンと、とうてい万人向けとはいえない芸風ではある。しかしながらこのどこかやるせない感情の応酬がときにとてつもなく心に響き感情をシンパサイズさせてしまう劇薬のような効果をもたらすのだ。このしびれる気持ちを体験させてもらえるうちはこの人の単行本を購入し続けるだろう。またこれだけネガなことも述べてきたがそれでも取っつきやすさで言えば超弩級に重苦しかった「うさぎのこえ」よりずいぶん受容しやすいのでハッチ入門としては好適かと。お話的にはヒロインの自壊衝動混じりの性的転落ぶりがどうにもやるせない中編「遥の歌」が、抜き的にはゲスい兄へ愛憎入り交じった感情を抱く短髪ボーイッシュ女子の痴態にグッとくる「兄帰郷」が私的お気に入り。
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