-新堂エル「新堂エルの文化人類学」ティーアイネット ISBN:9784887745001
話◎ 抜○ 消小 総合○
天才ショタ教授の命を承け世界各地の奇習を現地調査するJDヒロインが遭遇するのは毎回シャレにならない受難ばかりで……長編全4話(第3話:前後編、最終話:前中後編)。圧倒的なスケールと奇妙奇天烈な展開をバックに従えつつ問答無用のストロングエロスをエンドレスでくり広げる作者3rdコミックスだ。
レヴュウをはじめる前にいきなり身もフタもないことを白状してしまうが、自分は新堂エルのよい読者だとはとうてい言えない。強烈にえげつないアヘ顔連発にはいつまでもなじめないし、TSや異性装などジェンダー的立ち位置を無遠慮に揺さぶるような設定の多用にはどうしても引いてしまう。本来ならば敬して遠ざけたいような作家なのだけれど、それにもかかわらずまいど新刊が出るたびに足急き書店へ駆けつけるのはひとえにその壮絶なまでの作品世界にどうしようもなく心奪われるから。今回も期待は裏切られず脳裡にめくるめく一大スペクタクルを叩きこまれましたよ。
前単行本「TSF物語」の発売からおよそ2年半とずいぶん待たされはしたが、そのぶん単行本の束もマシマシで(プライスもちょっとUP)読みごたえは充分。内容的には全編同一コンテンツで、2011-13年にかけ「COMIC Mujin」誌上でロングラン連載された「フィールド・ワーク!」を収録のうえ単行本発刊にあたり改題している。
クールでソリッドな一般青年誌調の絵柄はデビュー以来の変わらぬ魅力だが、ふだんの端整な表情をたちまちみっともなくゆがめ白目剥きアヘ顔さらしまくるその極端な振幅がすさまじい。人間としての尊厳を全部かなぐり捨てたみたいに見える白痴フェイスをなんら躊躇なく描いてしまえるのがこの人の強みだ。
頭からシッポまで1本の話なので登場人物は必要最小限。表紙を飾るお下げ髪貧乏地味っ娘女子大生・宮下直海(みやしたなおみ)嬢をメインヒロインに据え、その他同級生のグラマラス楽天少女/褐色ボーイッシュ異人っ娘/ちんまりゴスロリ(秘密あり)と適宜抜きキャラを配する。それぞれ無-貧-やや巨-爆と各種乳サイズを取りそろえ多彩なニーズに対応だ。ただ出番的には主演女優たる宮下さんが群を抜いて多いので、彼女のルックスが気に入らない人はこの漫画から回れ右。
わりと大仰な単行本タイトルどおりに彼ら彼女らが未知の謎にいどみ珍妙な体験をくり返すそのストーリーは、作者の博覧強記ぶりがうかがえるような各種ギミックの過剰なまでのアマルガム。人里離れた山奥の奇祭から排他的な漁村にひそむ怪異、南洋の身もよだつ風習、街じゅうを彷徨する腐乱死体……という具合におどろおどろしいアイテムが豪華絢爛に入り乱れる仕掛けだ。もっともトンデモすぎるシチュの絨毯爆撃で見えづらくはなっているけれど、作劇それ自体はまさにハリウッド的エンタメの王道。典型的なシーク&ファインドの展開といい危機一髪の大ピンチがデウス・エクス・マキナ風にスカッと畳まれるクライマックスといい、あたかもそれは冒険活劇の連続上映のようだ。
アクション・ムーヴィーならばキモの見せ場はヒーロー/ヒロインの胸をすくような大見得となるのだが、こちらはエロ漫画であるからして当然その部分がド迫力ハードコアファックへと入れ替わる。ノーマルな男女の甘やかな交歓などはまったく出てこず、強姦輪姦異種姦無生物姦などありとあらゆる強要セックスが休むことなくくり広げられるさまはエロいというよりなにか凄惨ささえ感じるもの。いちどに3、4ケタのオーダーで性交したりタコやら怪物やら相手に孕ませ出産を敢行したりの飛び抜けた逸脱ぶりにはちんこを握る手も思わず止まってしまって、それは抜き漫画としていいのかとツッコまざるを得ない。
異様な状況になすすべなく放りこまれ強引に身体を蹂躙されるヒロインも圧倒的な快感に全身を支配されたちどころにヒトならぬ咆吼を発し愉悦におぼれてゆく。多数のちんこに穴という穴を貫かれながらよだれも鼻水も流れるままに身体を打ち震わせ焦点の合わない瞳で虚空を見つめ淫語乱射するその痴態は浅ましき下等生物さながら。大量のザーメンをお腹いっぱい注ぎこまれ得体の知れぬ赤児をひり出すに至りキチガイじみた性の饗宴もようやく劇終。
自家発電の支援に用いるにはオハナシがおもしろすぎてむしろ阻害要因となりかねないのが皮肉だけれども、読みものとしての高い完成度は全エロ漫画中屈指でありむさぼるようにページを手繰った。とりわけ男子女子問わずキャラ立ちまくりの人物造形は出色で、いつも自分の手でヒロインを窮地に陥れつつ最後ちゃっかり美味しい場面でナイト役の面目躍如なイヤミ天才少年・斎総一郎(いつきそういちろう)教授の千両役者ぶりは本作のみで終わらせるのがもったいないデキ。波瀾万丈の物語もオーラスでみごとに大団円を迎え、さんざん犯され孕まされの報われない系女子・宮下さんにもようやく安寧がもたらされて「ええ話や……」ともらい泣きしたのはナイショだ。
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