-まよねーず。「性交人形と、私」ティーアイネット ISBN:9784887745285
話◎-○ 抜○ 消小 総合○
自分と寸分違わぬ姿の機械人形を手にした少女たちは苦痛をともなうことなく変態行為の数々に没頭し中編3話+独立短編3本。少しだけ道徳や社会制度がねじくれた世界のなかでひたすらハードセックスにいそしむティーンズの痴態を批難するでも称賛するでもなくカメラ・アイに徹しながら冷徹に切り取ってゆく作者最新単行本は通算7冊めかつ当名義での6冊めとなるコミックスだ。
本作の発行元であるティーアイネットといえば、自分のなかでは問答無用ど真ん中ストレートの純粋抜き物件をドカドカ供給というイメージ。しかしながらその一方で他に類を見ない奇抜な作品世界を創り出す超個性派作家の宝庫でもある。わけてもその唯我独尊ぶり、誰もついていけない孤高の作風では定評のあるのがまよねーず。だ。デビューこそ他社だけれど結果としてTIに流れ着いたのは歴史的必然だろう。
後述する異様なまでのストーリーテリングに比してその絵柄はそっけないほどに淡泊で、劇画的泥くささもなければ逆に萌え絵ふうの華にも欠ける抑揚の薄いタッチ。ただ表情変化さえも拒否して能面のような顔立ちのヒロインばかりを量産していたキャリア初期を思えば最近はまだしも喜怒哀楽が見られるようになったと思う。近ごろは掲載誌である「バスターコミック」の表紙イラストをときおり担当するほどカラー作画も達者になったが、やはり白黒原稿の方で本領を発揮するタイプなのでその確認のために裏表紙の収録作コマ抜粋を参照するのがベター。
1冊まるごとの長尺ものだった去年発売の前単行本「あの娘のクラスはAV科」から今回は冒頭からの中編作と後半部の読切群とのミックス構成となった。いずれの話もメインで出てくるのは高校生近辺の制服女子で、物語展開に応じ上下の年齢層を若干フォローという感じ。そうはいっても若い子だろうと年増設定だろうとルックスに大差はなく、また極端な巨乳やら驚くほどペドいキャラもいなくて、中肉中背普通乳の特徴のないティーンズが延々並ぶ印象。顔立ちはどの娘も大差なく髪型以外の差別化要素がほとんどないので見た目の単調さは否めないが、とにかくオハナシが壮絶すぎるのでそんなのは読んでるうち次第にどうでもよくなったり。
肉便器だの売春婦だのまいど女子の人格そっちのけな設定ばかりを好んで投入する作家だが、もちろん今回もその期待を裏切らず人権蹂躙シチュのオンパレード。合法的に女の子にムチャさせるためだけにまよねーず。がひねり出した近未来ディストピアの奔流にクラクラさせられっぱなしだ。以下収録作品についてかいつまんで紹介しようと思うが、この漫画が一部のやかましい人たちに見つかったらたいへんなことになりそう。
少女らの姿かたちを「アバター」と呼ばれる生体ロボットで再現し、感覚を共有しつつ遠隔操作で日常生活を代行させることが常識となった世界を描くのが、唯一の続きものでありメインコンテンツ扱いの冒頭連作「Loversオルタナティブ」。快楽情報のみが伝わり肉体的苦痛はいっさいシャットアウトできることに気づいた人々はそれをもっぱら生身では不可能な強姦輪姦/肉体損傷系のプレイを楽しむのに用い、また倫理の壁を乗り越え近親相姦や淫行の実践にフル活用するのだ。アモラルな行為に没頭する彼女らの行き着く先までをも逐一つむいでゆくクールな描写にいつしか読み手も没入してゆく。
機械でなく実際の生身のボディが介在することでいっそう行為の異常さがきわ立つのが本作半ば以降に収録の短編たちだ。情操教育と称し一部の生徒が家畜同然に扱われるさまを描き出す「2-B飼育当番 赤根美兎」、家庭の替わりに国家が子供を育てる代償として売春による養育費返済を義務づけられる世界「少女娼館アパートメント」、忘れ去られ放置された国家プロジェクトにそれと知らず長年従事した少女公娼の物語「セックス&ワーカー&ホリック」の3編とも、異常きわまりない世界観のなか展開されるイカレたセックスをまるで現代日本のなにげない日常のように淡々と進行させるまよねーず。ワールドの真髄を余すところなく堪能できる。
どのお話も基本的にモラルのタガがあらかじめ外されているので、濡れ場も必然的に非人間的な容赦ないハードプレイが中心。膣といわず肛門といわず穴ボコを男根やら器具やら拳やらで埋められ、異物の侵入に泣き叫び嘔吐する少女の阿鼻叫喚の光景が容赦なく脳裡に叩きつけられる。人間性を完膚なきまでにネグレクトされモノ同然に扱われるヒロインたちの哀れな痴態に興奮していいのか同情すべきなのか迷いつつも摩擦運動を止めることができない。身体のあらゆるところへ体液をぶちまけられフィストファックの連発ですっかり弛緩した陰部をだらしなく露出しながら彼女らはひとしきり息を吐いてグッタリ横たわるのだ。
まいどながらに凄惨すぎる物語ではあるけれど、まよねーず。特有のどこか茫洋としたキャラデザインはいくらか空気を緩和してくれ、またハードすぎる作品世界をそれでもタフに生き抜いてときには夢や希望に胸躍らせる少女らのわずかばかりの笑顔は殺伐とした世界のなかで本当に奇麗に輝き心癒してくれる。そんなわけで収録作中でも毎日義務的に身体を売り続けるヒロインがただひとりの客とだけはハートウォームなセックスをくり広げ心の底から幸福そうなイキ顔を見せてくれる「少女娼館アパートメント」がもっとも心に残った一編。
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