-チバトシロウ「り:いんかねーしょん」文苑堂 ISBN:9784861172458
話○ 抜○ 消小 総合○
廃部寸前の大学漫研に集う童貞3人組の停滞した日常は飲み屋で出会ったビッチなお姉さんとのガチハメ乱交から一転動きだし彼らは渾身の大作を描くべく奮闘するのだが……表題作長編全12話。壮大なスケールの人間賛歌とショボい日々の情景とを縦横無尽に行き来しつつ悩める青年諸君のビルドゥングスロマンを正面切って描き出す作者最新刊は通算9冊めのコミックスにして本レーベルからの初お目見えだ。
ゼロ年代なかばあたりのデビュー以来さまざな雑誌でコンスタントに描き続け気がつくとすっかりヴェテランの部類。およそ湿っぽさのまったくないクールでシャープな描線は多種多様な個性が咲き乱れるエロ漫画業界にあっても他に類似品の見つけづらいユニークなもので、このへんが息の長い作家生活の秘訣でもあるのだろう。そんなわけで昨春にジーオーティーより上梓された前単行本「あにまるあそーと」からまたしても版元を違えての新作見参。
まるでアメコミの世界からそのまま飛び出てきたみたくバタ臭い基本ラインにほどよくオタ風味をブレンドし丁寧なトーンワークで彩りを添えた独特のタッチはいくばくかの変遷を経てここ数年はおおむね完成形と言える。今回は執筆時期が直近1年以内に固まっているので作画の安定感はこれまででも屈指。ゆえに表紙だけ見ての衝動買いでもファーストインプレッションを裏切られることはないと思うが、万全を期すのなら作者公式サイト内のえらく浩瀚な単行本紹介記事にてショップ購入特典の確認およびものすごい量の内容サンプル閲覧が可能なので、書店へ向かう前にまずは一瞥しておくのをオススメ。
この雄々しい絵柄でものされる女性陣はいかにも体幹のガッシリした豊満アマゾネスタイプが圧倒的多数派。頭身高めで筋骨隆々のフィジカルボディの存在感たるや、逆に男子諸君が筆致とは裏腹にみなさんわりと華奢っぽく描かれるだけによけいギャップがきわ立つ。このように女の子より野郎サイドをキュート寄りに振るのは性別問わず筋肉バカ大量投下の洋モノカートゥーンではまずありえない光景で、影響を受けつつもチバトシロウの個性の源泉はだいぶ違うところにあるのだとよくわかる部分。
ヴィジュアル面については既刊のエッセンスを踏襲しているのだけれど、物語構成はこれまでになく大がかりな仕掛けがほどこされている。カヴァーや帯コピー、あるいは広告宣伝では注意深く隠蔽されているので実際に読み出すまで気づかないのだが、極力ネタバレを避け大ざっぱに言うと、「ガラスの仮面」でなんら説明なしに第1話から「紅天女」がはじまるみたいな発端ですよ(わかりづらくてスマン)。異様な密度で描きこまれた背景のなか殺伐としたハードロマンが紡がれるさまは掲載誌である「コミックバベル」のなかでは思いっきり浮いていたのだが、さらに数話後いきなり世界観が180度変わりカリカリとペン入れ中の情景へチェンジしたのをリアルタイムで目撃した自分は心底ビックリしたものだ。その後くり広げられる日常劇は比較的オーソドックスなキャンパスライフもののノリで推移するものの、これも途中から怒濤の修羅場展開が挿入され落ち着かないことこのうえない。愛と青春の煩悶をたっぷり盛りこみ波瀾万丈の派手なお話運びはチバトシロウ謹製のケレン味たっぷりな作画にジャストフィットで、最後みごとに大団円で締めくくられる決着まで一気にページを手繰りまくること必定。
おおむね2分割の物語のどちらのサイドでも濡れ場には充分な分量が割かれ、かたや大量の女体に埋もれながらのエンドレス中田氏、もう一方では乱交/イチャラヴを交互に展開と趣向の異なるエロスを堪能だ。いずれもわりかしショタい男子が必死に腰を振り大柄な女丈夫を派手にイカせまくりというこの作家得意の構図が目白押しで、肉食獣の本能を全開しマシンガンのごとく淫語まき散らしながら目前の快楽におぼれだらしないアヘ顔を見せつけながらよがり狂うエロメスどもの痴態を読者の脳裡に絨毯爆撃。
オンナの方から積極的にちんこを求め大ぶりのボディを景気よくさらけ出してはみずから股を開いてレッドスネークカモン。屹立したシャフトへ腰を沈め粘膜どうしのハードな摩擦運動をスタートだ。ビッグバストをはしたなく揺さぶり下品にウエスト周りをくねらせながら法悦の態でハートマークを四方八方へまき散らす彼女らの痴態が淫蕩でたまらない。全身汗みずくになりながらいっそう激しく内奥をこすり合わせ昇りつめてゆくエロメスどもの子宮の許容量いっぱいに白くねばつく液体をプレゼント。
フィジカルエリートな女傑たちがおのが肉体を十全に活用のパワープレイ連鎖となるド迫力のエロシーンを従来作品から継承しつつ、単行本まる1冊使ってまるっきり趣を異にしながらも相互の深い部分で連関するパラレルワールドの構築をみごとやってのけた意欲作。さすがにすべてを説明しきるにはこれでも分量が足りなくて片方はダイジェストみたいな感じになっているが、数巻通しの大長編にするのでなければこれくらいが物語とエロのバランスの平衡点でありアプローチとしては正解かと。なんにせよこの狭小なスペースでは説明しきれない複雑な味わいのオハナシなのでいちど通読したのちも2度3度と読み返せばいろいろ発見もあり美味しくいただけることだろう。両パートとも最終的に2人のLOVE&PEACEな結末に持ちこんだ力業に脳みそを心地よく疲労させてもらい感謝。
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