2016-11-10

今晩のロデオボーイ。

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-樺島あきら「職業顔騎」ティーアイネット ISBN:9784887746329
話○ 抜○-△ 消小 総合○

顔面騎乗好きが高じ風俗店で人間椅子のバイトをすることになった主人公はさまざまな利用者たちとの出会いを通じ女尻乱舞と圧迫プレイに耽溺して中編3話+独立短編2本。屋外露出のオーソリティが趣向を変え新しい変態行為にひたる悦楽を怒濤のごとくお届けの最新単行本はこのペンネーム第6弾にしてすべての名義を併せての通算18冊めのコミックスだ。
とかくワンパターンだのテンプレだの言われがちな現代エロ漫画だけど、実際にはそんなことはなくありとあらゆるアブノーマルプレイを拝むことができる、世界に冠たる性の魔窟だと個人的には思っている――それが商業ベースに乗るかどうかは別問題として。そんななか刺激的な題材をセレクトしつつ雑誌媒体で途切れることなく活動を続ける偉大なヘンタイマスターたるひとりがこの人。業界大手の一角を占める「COMIC夢幻転生」で確固たる地位を築き継続的に新刊を送り出しているその姿には最敬礼せざるを得ない。そんなわけで前単行本「妊娠×5」発売からちょうど1年を経過してのニューリリースである。
残念ながら目次には収録作の初出データがないのだけれど、樺島あきら作品の場合はありがたいことに作者サイト内のお仕事履歴にすべての執筆媒体/掲載号が明記されておりそれを参照可能だ。さっそく確認してみると今回は冒頭連作「イス」および短編「いつでもどこでも」が2016年執筆、残り1本の「超実践的露出プレイ」のみ2014年度作品となる。健康的でプレーンな筆致は昔からだが直近になり若干描線のシャープネスが増した印象で、今回の新旧作品を見比べるとささやかながらもその変化は明確。そうは言っても極端な差異はないしいずれもクセは少なく受容しやすい絵柄なので、版元提供のコミックス情報でサンプル画像を吟味したのち特段の抵抗感がなければ即レジ直行でOK。
この端整な作画でもってつむがれる女性陣は年のころハイティーン~20代なかばあたりの雰囲気。かつてはほぼJK固定だったのが前作あたりからいくらか年齢層が上方向へシフトしたようなのだけど、大人キャラでも造形はみなさん愛らしいので俺のような熟女苦手っ漢でも大丈夫。昨今流行りのツヤツヤテカテカ濃厚トーンワークを駆使するタイプの絵柄ではないけれど、ボンキュッボンのグラマラスな体躯は充分な質感を備え読み手の勃起中枢を大いに刺戟。
物語傾向はキャリア初期からハッキリとアブノーマルエロ偏重で、長いこと一貫して露出系のエグい行為をしかしながらまるでレクリエイションのごとく明るく楽しく笑顔いっぱいにくり広げていた。それは今回最古の「超実践的露出プレイ」で典型的に現れている。そうした洋ピンライクにあっけらかんとした空気を保ちつつこのたびの実質的なタイトル・チューンに相当する中編「イス」では顔面騎乗という別ヴェクトルの変態シチュを展開。女性に馬乗りされケツを押しつけられることに至上の興奮を覚える主人公・藤袴(ふじばかま)が、その性癖を見込まれなじみの風俗店チェーンでセレブ女性相手の人間椅子プレイ導入のモニターを務めることとなり……というのが物語の発端。テストとして美人女性店長たちを相手にすることからはじまりセレブ主従やとある学園の理事長以下女性スタッフ一同を前にひたすら顔面にのしかかられお口でご奉仕しながら藤袴は尻にまんこにアナルにおぼれとめどなく射精するのであった。そのかたわら背景では別のラヴストーリーともいうべき事態が進行し最後思わぬ結末へつながるのだがそれはみなさま自身で本作を見てのお楽しみ。
前述中編および短編2本のいずれも普通の意味でのセックスはむしろ希少価値で、大多数は異常な状況のなか性交が進行するかあるいはプレイ自体が普遍的な性器同士バトルの範疇を逸脱するものとなる。この人得意の公衆面前おっぴろげはむろんのこと、今回は顔面騎乗をはじめことのほか野郎どもがマゾヒスティックな性癖をあらわにしそれを充足しては気ままに射精する趣向がてんこもりで、被虐の歓びに打ち震えつつはしたなく精を放つ彼らの姿にシンクロしてぼくらも気持ちよく虚空へオタマジャクシを射出するのだ。
男子M的な趣向にはほとんど免疫のない自分はそれらの色合いが濃すぎる部分ではどうしても勃ちが悪くなったものの、奇妙奇天烈なプレイがまるっきり牧歌的なアトモスフィアのなか進行する樺島あきら特有のヒリつくようなエロスの切れ味には感嘆しきり。ことに顔面騎乗大好きっ漢にとってはこれまでにない金字塔的作品であり評価青天井でもよろしいのでは。前作では若干ノーマル方向へ寄せてきたと思ったところへ不意打ちでまた1歩ディープな領域へ近づいたこの新刊を見るにつけ、この作家は意地でもありふれたイチャラヴなど描きたくないのだなあとその孤高の歩みに戦慄するのですよ。そんな光景を目の当たりにしつつチキンで平凡な小市民たる俺は「イス」登場人物のなかではわりかし常識人であり衆人環視のなか処女喪失など魅せてくれる理事長付き秘書・野路菫(のじすみれ)さんがいっとう好み。

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