2017-12-02

本日のパーカー大佐。

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-藤丸「ラブミーテンダー」ワニマガジン社 ISBN:9784862695284
話◎-○ 抜○ 消小 総合○

イケメンで売れっ子なのになぜか童貞の男性アーティストと彼の世話を一手に引き受ける辣腕女性マネージャーとの身体だけの関係はいつしか本気の恋に発展連作3話&ショート総天然色プロローグ+独立短編7本+フルカラーショート1本。底抜けドタバタギャグからしっとり切ない恋物語まで卓越したストーリーテリングを堪能しつつ女子連中のあけすけな痴態をたっぷり摂取の作者これが記念すべき成年向けファーストコミックスだ。なお筆名は特段奇をてらわずに「ふじまる」と発音します。
誰もが認めるエロ漫画業界の最大手「COMIC快楽天」に集う執筆陣はむろん界隈きっての俊英ぞろいなわけだが、みな平均点が高すぎて逆に個々人の名前が脳裡へ強烈に刻まれることなく読み通してしまいがち。この人も失礼ながら最近まではそんな感じだったのだけど、後述する作品に接して思わず驚嘆しその時点から一気に同誌の私的最注目作家のひとりへ。だもんで本作発売のプレスリリースが出るとともに速攻で予約注文をすませた次第。
大まかに分類すれば普遍的なアニメ/ゲーム系の絵柄といってよいと思うが、どちらかというとエロ漫画的なそれよりもヤンマガだのヤンジャンだの一般青年誌にいそうな系統のヴィジュアルだ。むろん快楽天で描くくらいだから間違いなく筆力は高いのだけど、昨今流行りのコッテリとやりすぎなくらいに緻密なトーンワークをほどこすタイプでないので見た目ずいぶんプレーンな印象。比較的濃いめの色彩を乗っけているカラー原稿と比べ白黒のそれはとくにザックリ感が強く、ギャグパートで元がわからないくらい顔を崩すメリハリのある造形ともあいまって雑誌のなかでは若干浮いた感じだった。なお収録作の初出を見ると2009-17年の快楽天掲載分とむやみにワイドレンジであるものの、初期から早くも基本的なラインは確立しており執筆時期の新旧差は気にならない部類。先に述べたように表紙絵だけではその本質がわかりづらいので、見本を手に取れる書店へおもむくか版元提供のコミックス情報ページで内容サンプルを参照してから購入する/しないを決定するのがグッド。
この特徴的な筆致から生み出される女性陣は年のころ推定ハイティーン~20代なかば附近の黄金世代。学生から社会人にクマの中の人など多種多様な彼女らは胸部の控えめな方が若干名いるものの大半はたいそう盛りのよい双丘をお持ちで、しかも景気よく張り出した胸に対しお腰の方はキュッと極端に締まった2次元マジック体型だ。とはいえその部分以外はしっかりデッサンされた3次元寄りともいうべきプロポーションなのも近ごろのエロ漫画っぽくなくておもしろいところ。外観のみに触れたけどむしろ白眉なのはそのイキイキした女の子連中のキャラメイクであり、性癖といい行状といいどこにでも存在しそうでいてどこかタガの外れた彼女らのかもし出す特異なアトモスフィアが物語世界にさらなる深みを加える。
藤丸という作家の独自性が最大限に発揮されるのはそのストーリーテリングにおいて。総体としてはコンビニ誌掲載物件にふさわしい穏健なラヴコメの集合体なのだけども、コミカルなのも胸を打つのも、ベタ甘だったりほろ苦だったり、平凡な日常舞台からSFティックな世界まで、およそエロ漫画とは思えないワイドレンジなお話たちを怒濤のごとくくり出してくるのだ。しかも同じオハナシのなかでゲラゲラ笑ったかと思えば数ページのちには切なさに身もだえしたりと振幅の激しいストーリー進行を平気でこなすのだからすさまじい。このへんは現在の快楽天よりエロ薄めオサレ路線で売っていた10数年前の同誌を彷彿とさせるノリで、その時代の残り香がただようころにスカウトされたであろうこの人が当時の雰囲気をいまもずっと引きずり続けているとも言える。かくもヴァラエティ豊かな作品たちのなかでもそのエッセンスがもっともよく表出しているのが唯一の長尺ものである「Life is a Battlefield」/「Live is a Battlefield」/「Love is a Battlefield」連作であり、トップアーティストと彼を支える女性マネとの山あり谷ありギャグありシリアスありのドタバタながらも真摯な本格ラヴストーリーは上質の恋愛小説のごとき珠玉の逸品。その他巻末のセンティメンタルな終末世界短編「8月の灯」も後を引く読後感で、こと作劇面に関しては2017年度エロ漫画単行本のなかで自分的にいちばんの収穫。
むろんちんこの愉悦に奉仕する作品群であるからには濡れ場の方も抜かりなく、1本あたり18-20ページほどのわりかしタイトな容量ながらも業界水準以上のエロスを確保。決して奇抜なプレイやド派手な演出があるわけじゃないけれど、男子女子がしっかり互いの体躯にしがみつきガツガツむさぼるように性器どうし干戈を交えるさまが激しくもエロっちい。さして恋愛感情のない関係であっても充分な熱量だが、とりわけ想いあうカップルだとなにげない日常会話から自然な形で甘い睦言へ移行し愛する気持ちを剛速球ストレートでぶつけ合うさまが読み手に鮮烈な印象を残しザックリと心の深い部分をえぐるのだ。
ふだんはフランクな仲でもいざ裸で向かい合えばたちまち熱っぽく執拗な情交がはじまる。舌先をからめ敏感な部分を刺戟しあったのちすっかり濡れそぼった蜜壷をご開帳し屹立した陽物を粘膜のその奥までインサート。両者が発する汗と体液と吐息にまみれながら幾度となくストロークをくり返すたび彼女はハートマークをまき散らしすっかり快感のとりこだ。タイトに抱きつき全身を打ち震わせながら絶頂するヒロインの子袋いっぱいに熱いほとばしりを勢いよく叩きつけたその刹那身も心も強固に結ばれた2人は饗宴の余韻にひたり心地よい疲労感に包まれて幸福をかみしめる。
エロ漫画フリークというよりは一般を含めたラヴコメ好きに広く啓蒙したい、甘くもあり苦くもあり少しアホでもあり、でも本当に心締めつけられる至上の愛の物語たちだ。これだけ底力のある人が初単行本刊行までに異様なほど時間がかかったのはエロゲやイラスト仕事など他分野が本業だったらしいからなのだが、実際それらの媒体で積んだ経験がエロ漫画業界の枠におさまらない水際立ったストーリーテリングの源泉なのだろう。直近になり執筆頻度がぐんと上がったことから今後しばらくはこちらに注力してくれるようでまことにありがたく、可及的すみやかに2冊めリリースも期待したい。なにせほぼ同時発売の快楽天最新号ですかさず前述の今回収録短編「8月の灯」と世界観を共有する読み切り作品を掲載したくらいなのだから非常に楽しみですよ。どの作品もエッジの効いたオハナシぞろいで大いに読み大いに使わせてもらったが、なかでも先に言及した藤丸漫画開眼のきっかけでもある「~is a Battlefield」シリーズが群を抜いてすばらしく、才能豊かなくせにヘタレな芸能人・タクミくんと、サバサバ系でいてドエロくしかもここ一番ではマジ乙女な有能マネージャー・すみれさんとのスチャラカ一途な純愛物語に始終きゅんきゅんさせられっぱなし。

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