2018-01-17

本年度の私設応援団。

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-煌野一人「ドールズ」ティーアイネット ISBN:9784887746732
話○ 抜◎-○ 消小 総合○

当たり前の日常を送っている女性が突然人権を奪われ性奴隷化させられる悪法が施行された世界で生贄の羊たちの凄惨かつ淫蕩な末路をケース・ファイルとしてお届け表題作オムニバスシリーズ6編8本(うち2話構成2編)。高飛車美少女はクラスのいじめられっ子に犯され権力をほしいままにしていたキャリアウーマンは下克上されてと冥府魔道へ一直線の作者最新刊はトータル3冊めにして当版元からのファーストコミックスだ。ちなみに本来こちらは年初発売のものをいささかディレイしての評価記事となったことをお詫びしておく。
キルタイムコミュニケーションから2014年に上梓されたこの人のデビュー単行本「ドロップアウト」は、その超難読な「ふぁんのひとり」というペンネームでまず一本取られ、続けて人類のダークサイドのみを照射するようなエグい設定に問答無用ハード凌辱の雨あられという昨今めずらしいくらいの暗黒エロス一直線ぶりで驚愕させられたものだ。その後もディストピアまっしぐらの世界観には拍車がかかるばかりで、同じKTCより一昨年10月に発売された通算2冊めにあたる前作「パラサイトクイーン」はその荒涼たるバッドエンド曼荼羅にすっかりめげてしまい店頭見本閲覧後に購入をパスしてしまったほど(作者さま本当にすいません)。そんなこの人がTIにも乗りこんでなにやらまたとんでもない漫画をものしたというのだからこりゃ買わざるを得ない。
クセはかなり強いものの端整な一般青年誌系のタッチは以前の記憶どおり……というかKTC/TIとも並行して執筆していたので特段の変化がないのは当たり前。人物のみならず背景なども手抜きなくキッチリ描きこまれたていねいな筆致が光る。残念ながら単行本の方には初出の明記がないがググってみると2015-17年にかけ「COMIC夢幻転生」に掲載のものを収録ということで作画品質も安定。なお出版社提供の単行本情報ページおよび著者pixivアカウントの発売告知エントリからサンプル画像や各ショップ購入特典を確認可能なので、あわてて書店へダッシュする前にそっちを覗いておくことを推奨する。
このたび登場する女子連中は花も恥じらう女子高生から熟れ盛りの30代人妻までかなりワイドレンジだが、元来お歳を問わずグラマラス系の肢体描写を行うのに加え、ティーンであっても頭身高めかつ大人びたルックスにする一方でアダルトさんをことさら老け顔にはしないので見た目そんなに年齢差を感じない。もとより細面で切れ長の瞳が印象的な、可愛いというより綺麗な雰囲気のヒロイン造形を得意とする人なので、才色兼備な憧れの先輩や涼しい顔して仕事の鬼なクールビューティなど毅然としたタイプの女性を描かせればとりわけ天下一品だ。もっともそんな彼女らをこの作家は容赦なく畜生以下の境遇へ堕とし2度と引き返せない地獄へと叩きこむのだからまことにタチが悪いですね。
アンリアルではハリウッド映画さながらのSFティックな趣向のもと精神支配だの異種侵略だのハード&ダークな強姦輪姦絵巻をくり広げていたが、夢幻転生では若干非現実色を薄め現代日本を舞台に。もっとも内容的にはあいかわらず人権団体から抗議殺到間違いなしのえげつない舞台設定をへっちゃらでやってのけるのだからそこにシビれるあこがれるゥ!
無作為に抽出された国民が身体/精神を支配する首輪をつけられ商品のように並べられて購入者の性処理に従事する「特定福祉行為に関する法律(通称ラブドール法)」が施行され3年。学校帰りに級友と無邪気にたわむれる少女、練習は厳しいけどやさしく美人な部活の先輩、ラブドールにされた親友を救うべく奔走するJK、夫の執拗なDVに耐え続ける人妻、職務に忠実な辣腕市役所職員……それぞれの暮らしを営んでいた女性たちはある日突然市民としての権利をいっさい奪われ性欲のはけ口としてオナホ同然に日々精液を注がれ続けるのだ。選ばれた時点でヒトとしての未来を閉ざされた彼女らには乱暴に扱われさまざまな処置をほどこされたあげく破棄されるか公衆便所へリサイクルされるかの悲惨な結末だけが待ち受ける――とまあ仕事先は変わっても煌野一人特有の荒涼たる作品世界はあいかわらず。ストーリーの全編にわたり徹底的なシニシズムが貫かれ、唯一ハートウォームに進行すると見せかけたお話すらその後に壮絶なほどビターな決着をさせることで読後感をほの暗く染め上げる意地悪さこそがこの作家の真骨頂だ。また各話ヒロイン交代の短編連作形式ながら物語のベースラインはしっかりつながっており、全編読み通すうち随所に仕込まれた伏線がさまざまな形で回収されてゆき最終的に第1話冒頭の場面をリフレインする結末へと至る循環的な構成はまさにお見事。
濡れ場では彼女らをただ肉体的に凌辱するのみならず心のなかの誇りも尊厳も根こそぎ台なしにし蹂躙することに重点が置かれる。1本あたり30ページ以上にわたる大ヴォリュームを利して、オーソドックスな強姦輪姦からはじまりアイテムを利用することで徐々に常識や人格まで原形をとどめないほどに改変しひとりの人間を単なるセックスの道具へとおとしめてゆくさまを執拗に詳細に描き出すのだ。奴隷さながらに肉体を乱暴に汚され破廉恥なコスプレや屈辱的な淫語を強制されては男の身勝手な欲望の忠実なしもべとして振る舞い所有者の望むままザーメンの奔流を浴び続けるうち、ヒロインたちはわずかながらに残っていた人間としてのプライドすらいつしか喪失して下品なアヘ顔さらした肉欲だけの抜け殻と化す。
学業や仕事に生きるまっとうな生活はある日一変し、その身を買われた先の男の欲望の対象として24時間休みなく性交に応じ精を注がれるだけの日々がスタート。好き勝手な時間に膣内射精されるだけでなくときとして別の穴も活用され、さらには複数のシャフトをねじこまれてその都度激しい衝撃に悶絶だ。アプリの力で思ってもいないエロワードを言わされたり意に反し強制的にイカされたりまさしくオモチャ同然に扱われたのち、ついには常時ちんこを求めるだけの浅ましいエロメスへと転落し、やがて所有者にも飽きられた彼女の最後の居場所は廃品回収業者のトラックの荷台の上。
ヒロイン造形いかんでいくらか私的使い勝手は変動したものの、圧倒的なまでのエロシーン密度と変幻自在のストロングプレイの連鎖により精液分泌支援ツールとしてトップクラスの働きをすること請け合い。行為内容のハードさだけなら凌辱系で他にも過激な作家はいるかも知れないが、徹底的に女性の自尊心をおとしめ辱める周到な制度設計を行う点で現在この人の右に出るものはないだろう。甘ラヴだけでなくこの手のダークなエロ漫画をもおかまいなしに長年読みつけてきた雑食の自分でも彼の織りなすミソジニーめいた壮絶な世界観には若干身構えてしまうのだけれど、とにかく女の子がひたすらひどい目に遭う作品が読みたいんだ下克上なんて許さん! という諸兄にはこのうえない楽園であり理想郷であることは疑いない。引き続き間違ってもヌルエロなど描かずいつまでも極悪非道勧悪懲善路線を邁進していただきたいものだ。ドロドロ人権蹂躙絵巻いずれも精緻きわまりないできばえだったが、なかでも常時暴力を振るわれる環境からラブドールとなったことでかえって善意の持ち主に遭遇し幸せな生活を送っていた彼女に再び訪れた災いは――の「芳乃泉(よしのいずみ)編」がお話的に、文武両道の優しい剣道部主将を悲惨な運命から救い出したはずのヘタレ部員たちが結局のところ人倫を踏み外してゆく「宮代華(みやしろはな)編」が抜き的にことのほか秀逸。

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