-堀博昭「迎撃商店街(2)」少年画報社 ISBN:9784785939588
話○ 抜△-× 消大 総合○
すべての土地を手中に収めんとする変態紳士の猛攻に商店街の女たちは次々と敗退を重ね、最後の砦となったヒロインがくり出す秘策とは……表題作長編8話(第9-最終話、完結)。マークなし。息もつかせぬ一大アホバトルを全力で展開する前代未聞の怪作は作者今年度の第2弾にして記念すべき通算20冊めのコミックスだ。
いろんな媒体で手広く執筆している売れっ子であるこの人は黄色い楕円雑誌だとたとえば8月に出た前単行本「DEBUT」のように、正統派のハードコア抜き漫画をモリモリ描いている。一方でコンビニ誌では肩の力を抜いたライトエロコメ主体になるというのがこれまでの傾向だったのだけれど、こちらはもっと別方向へいきなり暴走をはじめた作品。
去年発売された本作の1巻は1980-90年代オタカルチャーへの臆面もないオマージュをマシンガンのように連射するキチガイじみた疾走感で度肝を抜いたが、2巻に入ってハジけ具合はさらにパワーアップ。この作家の描く端整で流麗な頭身高めキャラたちが大まじめな顔で脱力ギャグを延々くり広げるのだからその違和感たるや尋常でない。
1巻に引き続き物語のメイン・イヴェントは最強変態・高橋克也vs笛山(フェザーン)商店街各店女性陣の異次元セックスバトルとなり、新たに酒屋・パン屋・花屋の看板娘が彼の餌食に。その過程で乱発されるのはジャンプ漫画やらサンライズアニメやら「銀河英雄伝説」やらで見慣れたフレーズや必殺技。それらが適宜サンプリングされ悪魔合体しながらドバドバ放たれてゆく光景は20代なかば~40代前半のごく狭い層の読者の涙腺を直撃すること必至だ。
堀博昭特有のグラマラス/ゴージャスな女体が咲き乱れエロメスどもの淫猥なアヘ顔飛び散るエロシーンはむろん充分に用意されているのだが、ことここに至ると読み手の脳みそに刻みこまれるのは前述のような全力バカネタばかり。画力も構成力も必要以上に高いものだからよけいに才能のムダ遣い感が増幅されてなんともむずがゆくなる。派手なエフェクトに彩られたグラマラスな肢体がハードな抽送に揺れ安産型のケツを激しく振りまわしてよがり狂う女子どもの痴態が身もフタもないパロディ絨毯爆撃と同時進行するその残念さといったら!
かくして降伏寸前に追いこまれた商店街側からはいよいよ真打ちたるメインヒロイン・遥が覚醒するとともに捨て身の攻撃を敢行するのだが、その結末は読んでのお楽しみ。まあ2巻完結であるからには当然収束はするのだけれど、最終回のおそろしく仰々しいヴィジュアルとこれまたアホきわまりない演出のいずれも集大成にふさわしいできばえで、前巻からおつき合いしてきた読者もまた感慨を新たにすることだろう。
前の巻に輪をかけて抜きツールとしては微妙だし、なにより飛び交うギャグはとくに平成生まれの諸君にとってリアルに感じられるか非常に疑問。しかしながら巻末著者あとがきにあるとおり「やりきった充足感」に満ちた、作者の持てる力を最大限発揮し得た力作であることは間違いない。さすがにガチ成年誌では怒られると思うが、エロ/非エロのグレイゾーンをいいことに好き勝手をやってのけた堀博昭のチャレンジ精神に惜しみなく拍手。
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