2013-03-28

今夜の近未来映画。

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-三糸シド「ラストフルベリー」三和出版 ISBN:9784883564866
話◎ 抜○ 消極小 総合○

彼氏には内密で変態性欲フルコース調教を受け続けるヒロインが日々強要される行為は限度を知らずエスカレイションするばかり表題作長編6話&プロローグ&描きおろしエピローグ+独立短編3本。肉欲全開アヘ顔乱舞の派手派手しいセックスのかたわらで自分の心と身体がなすすべなく壊れてゆく哀しみに揺れる少女の感情をヴィヴィッドに描き出す二面性が読み手のハートにずしりと響く作者2冊めの単行本は当レーベル初見参。
ポップ&キュートな絵柄とそれとは裏腹の狂気に満ちたド淫乱ぶりをさらけ出すメスイヌども絨毯爆撃のとてつもないギャップで度肝を抜いた処女単行本「ぽっぴんcherry」の刊行からおよそ1年半、そのすさまじいエロ曼荼羅にすっかり脳みそをシェイクされた衝撃を忘れられず今作のリリース情報を目にしてからずっと全裸待機でござったよ。
ややクセはあるもののそう多くない線で非常に豊かな表現をしてみせるセンスのよい筆致が印象的。独特の軽やかなタッチは一般誌でエロ抜き漫画を描いてもけっこうマッチしそうな感じではあるけれど、これまでのところはもっぱらその才能を成年漫画界でも最強クラスのストロングファックへ費やしている。
前作同様に登場する女性陣は清楚な制服の似合うハイティーンが圧倒的多数。わずかな例外を除きおっきな胸にタイトな腰つきの日本人離れした美麗プロポーションの持ち主が勢ぞろいだ。張りのあるおわん型のやわこそうなおっぱいは思わずむしゃぶりつきたくなる逸品なのだがあんまり大事にされず乱暴に引っぱられたりつねられたりするのが少々かわいそう。あとまったくの個人的感想なのだがショートボブの髪を描かせると魅力が一段とアップするのでそういう娘が増えるといいなあ。
巻末著者あとがきによると今作のタイトル・チューンは商業作品としてはやや変則で、同人で描き続けていたシリーズをスライドさせてきたとのこと。作者ブログの記事を見るとまったくの移植ではなく一部の設定をアレンジしているそうだが、メインヒロインにして三糸シド自身のファム・ファタールたる肉便器少女・桐子(ひさこ)を軸とする物語のベースは不変のようだ。表表紙でその豊満な裸身をさらしつつもあくまで慎み深いほんのり上気した表情を見せている彼女が裏表紙では一転してとてつもない変顔を恥ずかしげもなく見せつけるのだから女の子は怖いね!
表題作および読み切り群のどちらも物語のフレームはわりと共通しており、ヒロインが意に染まぬ形で凌辱されながらもいつしかその変態的なセックスのとりことなり彼氏のことなどすっかりそっちのけで多数の男たちとの甘美な情欲の隘路に堕ちてゆく一大調教絵巻が基本形態。いわゆる堕ちものはエロ漫画でも定番中の定番でありもはや新鮮味など皆無……と思うだろうが、三糸シドの描くそれは飛び抜けて関与する人員の多い超絶乱交ぶりやこれまた無数のヴァリエイションを誇る喜悦と咆吼のアヘ顔百面相などの過剰さ満ちあふれるヴィジュアルにより唯一無二の個性をかもし出す。
そんな芸風なのでむろん濡れ場こそがこの作家のレゾンデートルであり最強のリーサル・ウェポン。強姦輪姦屋外露出拘束生尺目隠しアナル尿道フィスト孕ませ堕胎とアブノーマルプレイ満漢全席でお送りするブルータルな性戯の応酬は背徳だの禁忌だのの閾値をはるかに超えていっそ爽快ですらある。失敗した福笑いのごとく極端に顔面を変形させるアクメフェイスももれなく付属してキチガイじみた交合にさらなる彩りを添えるのだ。すでに誰のザーメンかさえわからない白濁を全部の穴にぶちまけられてヒトならざるアホヅラさらし絶頂を迎えるヒロインの浅ましき痴態を余すところなくフィーチャー。
ここまでケダモノエロス全能主義みたいな書き方をしてきたが決して快楽のみにおぼれるのでなくヒロイン自身の後悔やら悲しみやらがしっかりと描写されるのも三糸シド漫画の美点。ことここに至るまでの行状を自嘲混じりに振り返る回想シーンや最愛の男に対する裏切りの瞬間をもっとも取り返しのつかない形で暴露することになってしまった際の胸締めつけられるモノローグがなんとも切ないのだ。いくばくかの救済措置が取られようとも2度ともう元どおりにはならない大切な「なにか」の喪失の痛みがそれぞれの物語で滔々と静かにすら語られる様子がいっそう哀切さを浮き彫りにする。白目剥きアヘ顔は得意科目でなくむしろ引いてしまう部類の自分がそれ満載のこの作家の漫画に惹かれるのはじつにこうしたリリカルな部分をも内包している不思議な作風ゆえ。
1on1の甘々ラヴなどどこにも存在せず女の子は例外なく痴呆じみたアヘ顔さらしてと間違っても万人にお勧めとはいかない強烈すぎるシロモノではあるけれど、いちどその魅力を知ってしまえばさらなる新作を待望せずにはおれなくなる麻薬のごとき1冊。メインコンテンツである「ラストフルベリー」の幸せなのか狂ってるのか判然としないオチにまた心かき乱された俺もやはり次回作を不見転で購入することになるだろう。あと短編のなかでは幼少時から肉体を蹂躙され続けるヒロインの心に唯一安らぎをもたらしてくれる男子との温かな交流が日々の荒涼たるセックスと残酷なほどのコントラストを見せる「あの日のように。」が非常に印象的だった。

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