-昇龍亭圓楽「淫靡な肉宴」久保書店 ISBN:9784765935562
話△ 抜△-× 消小 総合△
闇夜の怪異にまぎれ人は本当の欲望をさらけ出してオムニバスシリーズ全10本。端整な筆致とキュートなキャラ造形を武器にしておもに母子相姦ものを手がけてきた作家が心機一転ホラー仕立てのエロスをつむぎ出す作者通算9冊めのコミックスだ。
キャリアだけならもう十数年の大ヴェテランだが世に送り出された単行本は意外に少なくて、こちらの新刊も前作「ママごと」の発売が2011年10月だから、じつに2年以上も空白が明いた形になる。もとよりモリモリ作品を量産する人でないとはいえさすがにここまでペースが落ちるとなにか身体でも壊したのかはたまた仕事先とトラブったのかなどつい要らぬ心配を。
自分がこの人の漫画を最初に見たのはたしか15年以上前の「コミックジオトピア」かその後継の「コミックギガテック」かどちらかだと思ったが、当時からスッキリ系のセンスのよいタッチでそのまま陳腐化からもまぬがれ続け現在に至った感じ。いまや少数派となったトーンワークに頼らない淡い雰囲気の画面はコッテリとツヤの乗った昨今の成年向けエロ絵を見慣れているとまるっきり別の時空の世界のようだ。
久保書店の常で収録作の初出明記はまったくないが、同社物件には珍しく存在する巻末著者あとがきによれば「描いてから結構時間が経って……」と、いささか古めの作品であることを示唆している。ただキャリアの比較的早い時期に方向性は固まっており直近数冊の単行本と見比べてもそれほどブレは感じなかった。ともあれ近ごろこれだけプレーンな絵柄のエロ漫画は天然記念物級でいろいろと新鮮。
近年出たコミックスは前作のようなエロカワイイ母親×息子ネタをメインとしていたのだけれど、今回はコンセプトを大幅に変更。コックリさんや都市伝説、吸血鬼にラプンツェルとすこし不思議ですこし怪奇な、本当にあった怖い話だの学校怪談だのそういうタイプの物語を1話完結方式で展開する。前述のように初出一覧がないのでこれはあくまで推測なのだが、おそらくは成年誌の掲載シリーズではなく微エロコンビニ誌もしくは一般誌のお色気担当とかそういう出自なのではないか。
そんな邪推を裏づけるかのようにエロはきわめて薄味。さらに作者いわくそれですら「味を濃くすべく増量」したとのこと。うーむ増やしてこの分量だとすればもとの原稿ではファックすらしてなかったんじゃ? 1話あたり平均16ページほどのなかで交合シーンはせいぜい3、4ページであり、それも着衣Hが多くおっぱいもまんこも露出ひかえめ。摩擦運動のお供としては正直どうにも心もとないと言わざるを得ないところ。
そんなわけで本作のキモはむしろライトホラー風味の物語パートであり、ちんこの活用は二の次。股間を握る手はおとなしく収納してクールな作画と奇妙な展開とを堪能するのがよさそうだ。昇龍亭圓楽ファンがコレクターズ・アイテム的所有欲を満たすために購入するのなら問題はないが、抜き物件の新規開拓としてこの作家に入門しようとするのなら、今回のコミックスよりは既刊本の方をお勧めする。
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