今宵のフォード・システム。

-内々けやき「彼女、恋して、セックス」ワニマガジン社 ISBN:9784862693013
話◎ 抜○ 消中 総合○

男と女の肉欲オリエンテッドな関係を濃密描写短編全12本(うち単行本用描きおろし1本)。ひと筋縄ではいかないゆがんだ恋愛模様を称賛するでも批難するでもなくカメラ・アイで克明に描き出す作者最新単行本は当PNエロ物件としての9冊め(内々欅名義まで込みにすれば10冊め)にして黄色い楕円マークつき第8弾コミックスだ。
いまや一般誌で複数の連載を持ちすっかりいっぱしの非エロ漫画家なのだけれど、一時期より数は減ったものの現在もモリモリ成年向けでの活動を続けてくれるありがたい人。それでもさすがに単行本刊行ペースは落ちついて、茜新社よりリリースの前作「おねショタおね!」から本作発売まではおよそ1年半と、多産なこの作家にしてはブランクの大きかった部類。またワニマガ物件としては3冊前の「発情楽園」(2011年刊)以来となる。
ザックリと勢いのある描線でつむがれる一般青年誌調のタッチはすでに完成形で、とりわけむっちりグラマラス系のヒロインを描かせるとたまらなく扇情的。むろん今回もおっぱい大きめ下半身どっしりの女の子'sが目白押しなのだが、快楽天系列のなかでも比較的女性陣が年少寄りな「COMIC快楽天BEAST」の誌風に合わせてか、ヒロインの年齢層がハイティーン中心に10代なかば～20代入りたてと内々けやき作品としてはかなり若い方。よってこの作家の描くドエロい年増キャラがお好みの方には積極的にオススメしない。
描きおろしパートを除きすべて前述の快楽天BEASTを初出とする収録作品たちは1話完結の読み切り専科。大半が16ページ、長くても20ページと1本あたりの分量はかなり少なめなのだが、いつもこうした短めの話ばかり収録の単行本で自分が苦言をもらすような、物語展開の無理やり感がこちらではほとんどないのがすばらしい。それでいて濡れ場密度もまったく犠牲になっていないのだから、限られたヴォリュームでお話とエロをなんとか両立したいと苦闘する他の作家にとってはこの作品集が格好のヒントとなるはずだ。
コンビニ誌掲載物件ゆえくり広げられるのは合意エロばかりなのだけれど、オーソドックスな恋人同士のイチャラヴはごくわずか。ほかの漫画家の作品ならこの2人は結ばれるだろう、これは最終的にくっつくのだろうという読みがことごとく外れ、どうにもねじくれた関係へと結実する悪魔的なストーリーテリングが冴えわたる。そのぶんいわゆるビッチネタやNTR的雰囲気を持つ話が主流となるので、運命の彼氏彼女が無事恋愛を成就させるタイプのお話しか摂取したくない人は絶対に近寄らないこと。
たとえステディな相手でなくても女の子はセックスをいやがっているわけではなく、むしろ自分から積極的にご奉仕にはげみ快楽享受に専念する。ビッグバストをブリブリ揺らしほどよく生い茂った下腹部をハードに使役しながらのストロングファックが読者の勃起中枢をダイレクトドライヴだ。マジカルちんこの威力にすっかり屈し恍惚のアヘ顔さらしてよがり狂うさまに摩擦運動もはかどりまくる。やわこそうなもち肌の感触を楽しみながら中田氏三昧に至るまでのシークエンスを大ゴマ使って展開だ。
だらしなボディを全開にしてエロメスどもはいきり立つ怒張を大喜びで迎え入れる。いちばん敏感な部分をゴリゴリほじくられて目を白黒させながらはしたなく嬌声を発する光景がたまらなく淫猥だ。ハートマークを四方八方にばらまきながら自分で腰を使い膣内をきゅんきゅん締めつけてくる女どもの子宮の奥めがけたっぷりと白くねばつく液体を叩きつけて種つけ任務完了。
おそろしく息子をしごける高品質の精液分泌支援装置であることは間違いないけれど、全編を貫くシニカルきわまりない女性観に空恐ろしさを覚えたり。今回は含まれていないが作者が好んで描くショタものでは少年たちにそうした悪意が向けられることなど皆無なだけに、なにやら精神的なスティグマでも負っているのではとついよけいな詮索を。ともあれひりつくようなオハナシの緊迫感と問答無用のハードエロスとがキッチリ並び立つ良作であり、ある程度ダーク要素に耐性のある方へは大いに推奨したい。今作中ではまだしも穏健な部類の、ちんまいのに出るとこ出たえっちぃJCを美味しく召し上がり「少女の一生の80分の1とセックス」と、こちらはもっとも真っ黒い、幼なじみ押しかけ系と見せといてヒロインが他の男とエンジョイしまくりの「幸せなひとたち」の2本がマイフェイヴァリット。