-くまのとおる「あなたとだからシタイコト」富士美出版 ISBN:9784799506035
話○ 抜○-△ 消小 総合○
取っつき悪く偏屈な先輩女子の気まぐれで関係を持ったのちも主人公はいろいろ振り回され連作2本+天才変人科学部部長は気になる後輩男子に惚れ薬を仕込むハズが……本編&巻末描きおろしショートエピソード+独立短編8本。恋愛に不器用な男子女子がそれでも勇気を持って一歩踏み出す甘酸っぱい青春模様を濃厚イチャラヴエロスとともにお送りする作者最新刊は通算3冊めのコミックスだ。
当版元の看板誌「コミックペンギンクラブ」を主戦場に堅調な活動を続ける人だが、いわゆる現在流行りのエロ漫画たちとは対照的な作風がウリ。超高密度の目の詰んだ作画にトーンモリモリ貼っつけて液汁バリバリ飛ばしまくり……という昨今の風潮に背を向けた、クリーンで素朴なタッチにこれまたほのぼのテイストな濡れ場という意外性が逆に類似品ばかりになった最近のこの界隈できわ立つのだ。むやみに作画カロリーを高くしていないおかげか執筆ペースも比較的速く、前単行本「キモチイイのがスキなんです」刊行から1年ちょっとでの再会である。
エロ漫画らしからぬしっとり落ちついたトーンの表紙をめくり出てくるのはこれまた健康的な少年漫画テイストのただようヴィジュアルだ。むろん造形は最新型にアップデイトされてはいるけれど、濃厚なトーンワークに頼らずベタも多くない画面処理もあってシンプルな印象。例によってこの出版社はろくに収録作の初出を記載してくれないのだが、おそらくは前作発売後のペンクラ掲載分のはずでクオリティの高さは折り紙つき。富士美出版からの同日発売物件であり昨日レヴュったたまごろー同様に版元公式web内のコミックス情報ページから立ち読みが可能なほか、著者pixivアカウントの発売告知エントリでサンプル画像を参照できるので、近所に見本を置いている本屋がなくてもただちに中身の雰囲気を体感できるのがうれしい点。
今回登場の女子連中は年のころハイティーン~20代中盤あたりのゴールデンエイジで占められる。近ごろはどっちを向いても爆乳一辺倒な作品が多いなか(まあ自分もそういうの好きなんだけど)、くまのとおるは貧乳から巨乳まで幅広く乳サイズを取りそろえるのが特徴的。全体的にスレンダーな体躯なのでおっぱいデカい人でもド迫力バストみたいな感じはなくほどよいヴォリュームで、慎み深い双丘をお好みの方には強くオススメ。そして乳以上にヴァリエイション豊富なのが彼女らの多種多様なキャラメイクで、誰ひとり類似型のいない個性炸裂の女の子たちのなかから読者はみな自分だけのお気に入りを見つけ出せるはず。
そしてあたかも読み手全員を思春期に立ち返らせるかのような心ときめくラヴコメ絨毯爆撃こそがこの作家の真骨頂だ。偶然の出会いから幼いころからの長い付き合いまで、同世代あり年の差あり、さまざまな背景を持つカップル10組が甘く熱く恋のメロディを奏でる。カヴァー下の作品解説によると必ずしも思いどおりにコントロールできたわけではないとのことだけど、まるで前世紀に少年誌でお世話になったような純朴そのもののボーイ・ミーツ・ガールが最新の作画とより多様なシチュをともなってくり広げられる光景はまことに得がたい読書体験。とくにフォーリンラヴ直前の男女が恋愛成就に向けすれ違ったりようやく互いの気持ちを確かめ合ったりのドキドキぶりが男女双方のきめ細かいモノローグによって緻密につむがれハッピーな大団円へ向け盛り上がってゆくさまは圧巻で、本当の意味で結ばれた彼氏彼女の前途にさらなる幸あれと読後の気分はまるっきりバカップルたちの応援団長ですよ。
めでたく恋愛成就のその先はむろん生まれたままの姿で固く抱き合いガッツリ熱くハメまくり。1本あたり16-20ページとヴォリュームに余裕が少ないうえストーリー優先の組み立てでエロシーン支配率はけっして高い方ではないものの、2人身体を重ねピタッと密着させながらせわしなく愛の言葉を交わし合う、いかにも「イチャついてる」感のある描写をたっぷりと投下されるのがまことにむずがゆくもエロっちいのだ。最愛の彼に抱かれほおを紅潮させながらまだ快感に慣れぬ風の彼女らが徐々に熱っぽく呼吸を荒げついにははしたない嬌声まで発して覚えたてのセックスに夢中になってゆく一連のシークエンスが読者の勃起中枢をダイレクトドライヴ。
紆余曲折ありつつもようやく真に想いあう気持ちを確認した彼氏彼女は手を握り唇を重ねながらベッドイン。着衣をずらされ敏感な部分に口づけされて思わず少女は甘い声をもらす。濃密な愛撫ののちすっかり濡れそぼった秘密の花園をステディな彼にゆだね性器どうしのランデヴーがはじまるのだ。稚拙ながらも2人して本能に従い腰をすりつけ粘膜どうしハードにこすり合わせて覚えたての快感に没入する。ねっとり舌先を絡めタイトに抱き合いながらいよいよ感極まりメスのツラ見せつけながら昇りつめてゆく彼女の内へ外へと熱い白濁を注いだその刹那両者ダブルノックアウト。
中田氏大好きっ漢たる自分にとってゴムつきファックやぶっかけを多く用い生でザーメン注入はむしろ少数派のこの作家はけっして私的嗜好ドストライクというわけではない。にもかかわらず単行本を欠かさず購入するのは、多種多様なカップルズのインスタントではない山あり谷あり人間くさい恋愛模様にいつも心揺さぶられるから。イヤな人物の誰ひとり登場しない(まあ多少ひねくれたキャラは出てくるけど)ハートウォームな物語世界にいつまでも身を任せていたい、そんな心地よさを保っている限り自分はくまのとおる漫画のお世話になり続けるだろう。そんなわけで今回も濃密なイチャラヴを堪能させてもらったが、なかでもひそかに好意を寄せるオカ研先輩女子と夜の廃ビルで甘く激しくベッドイン「暗闇でドキドキ」と、筋骨隆々男子×短躯華奢女子の純愛濃厚超体格差凸凹エロスを展開の「並んで歩いて」のガッツリ膣内射精2作品がお気に入り。
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