-藤丸「ユアソング」ワニマガジン社 ISBN:9784862696878
話◎ 抜○ 消小 総合○
沈みゆく世界のなかで育み慈しんできた愛は刻を経ても永遠に……連作オムニバス全11本。葛藤に悩み煩悶を抱えながらシビアな環境を生き抜く人々が愛に歓びを見いだし性の愉悦に心打ち震わせながら前を向き力強く生きてゆくさまを点描しつつ最後すべての道筋がひとつにつながる壮大なストーリーを描いてみせる作者最新刊は通算2冊めのコミックスだ。
誰もが認めるエロ漫画雑誌界の最大手にして総本山たる「COMIC快楽天」はいかにも売れ線まっしぐらのドエロい抜きツールぞろい……と思いがちなのだけど、他誌でもなかなかお目にかかれないような個性派も随時起用して懐の深いところを見せている。このたび評価の俎上に載せるこの人もエロいのはエロいけれどもなにより強烈なストーリー志向が横溢していてときにはオハナシがおもしろすぎて使いづらくなったりするくらいの独自路線だ。そんなこの人が世に放ったデビュー作たる前単行本「ラブミーテンダー」を一昨年の末に上梓してからほぼ2年経過しての2nd Editionはまたしてもとびきり凝った趣向で我々を出迎えてくれましたよ。
上品なマット仕上げの瀟洒な表紙はエロ漫画らしからぬエレガントさで、ほかの単行本とは異質すぎて逆に新刊平台での存在感抜群。いささかコッテリ感のあるカラー彩色とは異なりモノクロ原稿は少々パサついた印象だけど、端整かつムダのない描線でつむがれる一般青年誌系のタッチはさすが画力至上主義の快楽天にあっても相応の存在感を放つ。1本のみ電子配信を初出とするほかはすべて前作刊行後の快楽天掲載分でまとまった収録作たちは集中的に執筆されたこともありクオリティは高値安定。いつものようにワニ公式サイト内のコミックス情報ページからサンプル画像をおがめるので、藤丸初チャレンジの方は先にそちらのチェックをば。
おおむねハイティーン~20代前半あたりの黄金世代を描くのが十八番の作家であり、それはこの新刊でも同様。顔立ちはキュートなのにおっぱいは特盛でドドーンというみんな大好き童顔巨乳系の肢体描写をする人で、当然この俺も大好物ですよ。なお唯一存在する貧乳さん1名も物語のなかで立派に成長するのでご心配なく。それに加えやかましいのからむっつりさんまで、単純明快なのありなに考えてるのかわからないのありと多種多様なキャラメイクで単行本1冊ぶんの長丁場を飽きさせない。
藤丸漫画にあって他を圧倒し唯一無二の個性を発揮するのはなんといっても物語構築において。ことに本作は一見関連性のない読み切りたちがいつの間にか撚りあげられ最後にはすべての糸がつながってひとつの壮大なストーリーが浮かび上がるというシームレスな構成が特徴的だ。それゆえにちょっとでも深いところへ近づくと速攻でネタバレになりかねないので、この稿の説明では非常に遠回しな記述をしたり故意に肝腎な部分をすっ飛ばしたりするのであしからず(紹介スキルが足りないとも言う)。ちなみに可能であれば1冊めを引っぱり出し最後に載っている短編「8月の灯」を脇に置きながらこの新刊を読み通してほしい。なんとなれば、この単行本まるまる1冊がいわば短編1本では到底語りきれなかった部分を補完しひとくくりのストーリーとして完結させる、いわば「8月の灯」完全版だからだ。
もはや両親公認で毎日犯りまくりの高校生バカップル・ひろ(通称ひろくん)と紗和(さわ)、彼ら2人の無邪気な交合から物語はスタート。次の話ではいきなり別の幼なじみたちが、その次はまたしても違う彼氏彼女が/研究者が/人外っ娘が/スポーツ少女が……と物語はパッと見ただの読み切り連発のように思われる。しかしながら日常パートをよく読みこむとそこには共通のバックグラウンド――水位が上昇しどんどん居住地が狭まっている世界――が横たわり、しかも事態は着実に進行しているのだ。快楽天掲載時にこれら最初の数本を読んだときには「同じ世界観なのかな」と感じつつもまだそこまでの確証はなく、また本当につながりのなさそうな作品も掲載されていたので気づかなかったのだけど、終盤になるとそれら無関係に見えた話までが欠かせないピースとして綿密に関連していたのがわかり心底ビックリですよ。そして完結2つ前の「終わりの電気羊」でこれまでの伏線がすべて回収され物語の到着点が明確に示されるあたりはまさに圧巻。これら長きにわたる彼ら彼女らの物語を最後「8月の灯(了)」で藤丸は驚くような形で締めくくってみせるのだが(自分はラストを見てガルシア=マルケス「百年の孤独」をちょっと想起してしまった)、その鮮やかな手腕については実際にみなさま自身が読んでのお楽しみ。
かくも壮大な物語に対しエロシーンもけっして圧倒されっぱなしというわけではなく、1本あたり20ページ内外のそう多くない分量ながらガツガツと激しく身体を重ねるのだ。とりわけ藤丸謹製の魅惑のビッグバストがブリブリ揺れながらのガチハメナマ中田氏は壮観で、ぷっくりまんこにいきり立つ怒張を突き立て粘膜も破けようかという勢いでストロークを刻んでは幾度も子宮の奥へ特濃ザーメン放出のスペクタクルな光景を惜しみなく披露。
ゆるやかに喫水が上がり続け人の営みそのものが水没していこうとする世界のなかでも愛し合う男と女はタイトに抱き合い性器どうし激しく干戈を交えては互いの存在を確認するのだ。艶めく肢体を白日のもとさらけ出し豊かな双丘をあらわにして2人終わりなき性の饗宴に没頭。両者臆面もなくラヴワードを乱射しながらゴリゴリちんこまんこをこすり合わせ日本語にならない咆吼を発するさまが淫猥でたまらない。いよいよ感極まりイクイク連呼の彼女の子袋の許容量いっぱいに2度3度4度と白くねばつく液体をお見舞いだ。
さまざまな形で張りめぐらされたヒントの断片が最後ひとつにつながり一気に解放される物語のカタルシスを存分に味わい読後感まことに爽快。ネタバレ防止でずいぶん不親切な紹介の仕方をしたけれど、その全容を存分に味わうためにも即座に本屋へ向かい本書をレジへゴリゴリ押しつけるのを強くオススメ。なお全編読み通してもピンと来なかった方のために作者は親切にも複数の箇所でお話のアウトラインを開示しているので解読の補助にぜひ(最初に読んじゃダメよ!)。最後本当のハッピーエンドを迎えた2人に拍手するとともに、実用目的では中途のエピソード2本、「青年期の憂」の短髪巨乳水着っ娘・花代子(かよこ・通称カヨ)ちゃんと、「はるの牛飼い」に登場する名無しおっぱいちゃんでもって愚息をハードユース。
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