-悠宇樹「おにいちゃんといっしょ」久保書店 ISBN:9784765935296
話△ 抜△ 消無(前半部詳細性器描写なし) 総合△
進学で同居生活を開始したシスコン兄&ブラコン妹はお互い結ばれる気満々なのになかなか進展がなくて表題作長編全7話。問答無用のハードエロスが持ち味のこの作家がちょいと趣向を変えて勝負する最新刊は2013年に入り早くも2冊めのコミックスだ。
ほんの半月ほど前に茜新社から今年1発目の新刊「抜けがけ絶対禁止」が出たばかりだというのにこの産出ペースは驚異。もっともこれだけ立て続けに本が出るのは、元来筆の速い人なのに去年は再録本のみで純粋な新作の刊行がなかったせいだろう。いったんストックを放出したので次は比較的長めのインターヴァルが空くものと思われる。
現在では自前の雑誌媒体を持たない久保書店はコミックス発行の際に他社原稿の落ち穂拾いを積極的に行っているのだが、今回も巻末著者あとがきを読むと携帯配信の連載作品を収録とのこと。そうなると2010年に今作同様久保から上梓されているケータイサイト初出の作品群を収録した「愛玩処女」と同じルートだろうか。もっともそちらは1話完結でこっちはまるまる1冊長尺ものという違いはあるけれど。
連載時期の明記はないがおそらく直近の執筆とみえ、中身の絵柄はアニメ絵をベースに適宜萌えフレイヴァーを添加した表紙イラストと完全互換。ゼロ年代のタッチと最近数年のそれとを比較するとムダな線が消えクドさが減退してと時代の潮流にフィットさせるべく作画に手が加えられているのがよくわかる。
物語は一足先に大学入学で上京した兄を追っかけて妹が大学付属の高校へ合格し晴れていっしょに生活を開始し紆余曲折ありつつも最後ようやく結ばれる、というオーソドックスなラヴコメ仕立て。ただしヒロインが本番するのは最後の最後でそれまでは妄想やオナニーだけなので読んでてじれったいことこのうえない。さすがにそれでは紙面が持たないので兄ちゃんがそばに寄りつく同級生やバイトの同僚などとスポット的にHして黄色い楕円物件として恥ずかしくないだけの濡れ場総量を確保するものの、この作家が他誌で描いているようなインスタントファック絨毯爆撃に慣れてしまっていると欲求不満を覚えるかも。
そんなわけで内容はともかくヴィジュアル的には充分なスペースがエロに割かれる。愛らしいフェイスに大ぶりのバスト&ヒップが付属するヒロインズのやらしい肢体が画面狭しと乱舞し性器どうしゴリゴリと干戈を交えるのが悠宇樹の黄金パターンなのだけれど、ここでまたしても違和感が。性交シーンの密度はさておきこの作家の最大の持ち味である緻密な性器描写がずいぶん遠慮がちになっていて、とりわけ前半部ではちんこまんこがハッキリと見えないアングルを多用しろくに結合部を見せてくれない。おそらくは携帯配信時のレギュレイションが厳格なせいなのだと思うが、ピキピキちんことシワシワまんこの果てなき階級闘争こそがいちばんの美点なのにそこがスポイルされるのは正直つらいなあ。最終話はサーヴィスなのか天魔連載分と遜色ないちんまん描写&ガチファックが展開されているだけにそれまでの腰の引けた姿勢はひたすら残念だ。
個人的にこの作家に期待するものと今作の路線とがズレていたせいで書き方がきつめになってしまったが、恋の進展をやきもきしながら見守ることに喜びを覚えるラヴコメスキーにはむしろ好適かもしれない。よくよく考えるとこの人のデビュー当時はむしろこうしたお話主導型の作品が多かったわけで、その意味ではいにしえの悠宇樹ファンが再入門するとっかかりとしてオススメ。
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