2013-11-28

本日の阿部定事件。

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-緑のルーペ「ガーデン(2)」茜新社 ISBN:9784863493995
話◎ 抜◎-○ 消小-中 総合◎

親しい女性たちを次々失い孤独をかみしめる主人公と、父親の子を宿し彼の築いた楽園へと帰還しようとする少女と、2人の刹那的な交わりはそれゆえに燃えあがり……表題作長編7話(前単行本より継続:第10-最終話、完結)&描きおろし幕間/後日談。登場人物たちに襲いかかる災禍とそれがもたらす意外な結末とを積み重ねつつ最後の壮絶なカタストロフに向けてにわかに物語が加速する光景をひりつくような科白のやりとりと狂気じみた情欲の発露とをバックに従えながら読者の脳裡へダイレクトに叩きつける作者成年向けとしての3rdコミックスだ。なお機種依存文字避けで巻数表示にアラビア数字を用いたが、本来の表記はローマ数字となることをあらかじめおわびしておく。
去年6月に刊行の前単行本「ガーデン(1)」の最後尾あたりでようやく物語の大枠が明かされたことから、この巻では進行が一気にスピードアップ。そのまま最終話までハイテンションで突っ走るその真髄を味わうには当然2冊セットで読み通さないとなんの意味もないと言ってしまっていい。書店の方々にも可能ならば両方平積みにしてユーザーの同時買いをサジェストする体勢での販売をお願いしたいところ。
さっくりとセンスのよい描線でものされるセンスのよい絵柄は大まかにはアニメ/ゲーム風味のそれになるのだろうが、昨今エロ漫画業界で流行りのコテコテにお肌のツヤを強調したトーンワークがないぶん脂の抜けた印象。なんとなく大学漫研とか美大の絵画系専攻とかそんなイメージの静謐な作画は、しかしながら過剰なまでに濃密な愛欲の横溢にも意外にマッチしているのが不思議だ。
どうにも人付き合いの上手くない高校生男子・幸太郎がそれでもどうにか心許せた4人の少女――中学時代からつるんできた女友達・あざみ、クールで毒舌な部活の上級生・昼顔(ヒール先輩)、よくなついてくる居候先の従妹・にんじん、そしてネトゲのオフ会で知り合いなし崩しにセックスフレンドとして関係を持ち続ける謎めいた女の子・ひつじ。しかし前巻までであざみとヒール先輩は主人公の前から姿を消し、みずからの過失でにんじんは彼のもとを逃げ出し、そしてひつじは衝撃的な事実とともに幸太郎へ別離を告げる。彼女らの名を副題に冠した4つのパートに分割される2冊通しのストーリーの主題は幸太郎がひたすらつながりをなくしてゆく過程を追い続ける、一種の喪失のヴァリアントという言い方もできよう。
前巻でゲスい野郎どもによりガッツリレイプされ犯され続けすっかりちんこなしでは生きられないまでに堕とされた2人に続き、こんどはコメディリリーフとして殺伐とした物語にうるおいを与えていたにんじんまでもが歪んだ愛情の餌食ですよ。実の父親による偏執狂めいた調教計画がひつじ父の手助けで最終パートまでも実行に移され、手ひどいレイプと慈愛に満ちた安らぎとがあわただしく交錯しながら未発達な肢体をいろんな体液まみれにしてその歳じゃしちゃいけないアヘ顔さらしてよがり狂う幼女一丁あがり。
そしてこれまでもいろんな男たちの性欲のはけ口として肉体をハードに使役してきたひつじにはサブヒロイン3人と別の展開を用意。実父のマインドコントロールめいた強力な呪縛に囚われ遠大な陰謀のコマとして立ち回ってきた彼女だが、その心の奥にわずかに残っていたアモルフな感情が主人公と身体を重ねるうち徐々に醸成されてゆく。盲目的に父の指示に従うことだけが幸福だったひつじの心は自我の芽生えとともに揺れはじめ、そのイノセントな笑顔がしだいに影を帯びついには奇妙な泣き笑いのような表情へと変貌するさまがなんとも痛ましい。だがこれが伏線となりラス前の衝撃的な展開、そして最後の大転回へとつながるのだ――ここからは一字一句ネタバレにつながりかねないので、わざとボカしぎみの記述となるが悪しからず。
最後の砦のひつじを含めすべてを失った主人公だが、やがて彼は意を決しひつじの父の構築した愛情セミナーへと乗りこむ。そこではすでにひつじの父が企図しつつもその思惑さえ越えたある種のセックス・コミューンが実現していた。その状況を受け入れるもの/とまどいながらも取りこまれようとするもの、そして、拒絶したもの。彼女ら自身の選択がなされたのち、残りの少ないページでは幸太郎のもとに身を寄せたひつじのその後を見ることができる。まっさらな白紙のようになにも知らない少女だった彼女がようやく愛を理解しそれゆえに激しい後悔にさいなまれるそのちっぽけな姿、泣きじゃくる彼女をきつく抱きしめ守り続けることを心に誓う幸太郎の決意、それらが描かれた最終話最終ページを凝視しながらいまも震えが止まらない。
ジリジリ息苦しくなるような重たい作劇と同時進行の激しいエロシーンもまたおそろしく密度の高いもの。抜きキャラ4名のうちおっぱい大きめ2名はもうほとんど出番がなく並乳/貧乳のふたりがもっぱら濡れ場を担当するのだが、過剰なまでのエロワードが乱舞し白痴めいたアクメ顔を怒濤のごとくくり出しながらのファックはむやみやたらと扇情的。ぷっくりまんこをハードに貫きながら幾度となく膣内射精しまくる光景を豊富に断面図を織りまぜながら展開されてマイちんこも大忙しだ。動物じみた咆吼を発しながら瞳孔おっ広げて狂おしく種つけ懇願しまくるヒロインのドスケベまんこの奥深くへ間欠泉のごとく大量の白濁液を放出。
物語を彩った4人のヒロインのなかで、きちんとした形でその顛末が語られるのはひつじただひとり(あと若干にんじん)。すなわちここに来て読者は緑のルーペがこの長編をどういう意図のもと執筆したのか明確に知らされることとなるのだ。それは巻末著者あとがきでも断言されていて、ゆえにあざみやヒール先輩のその後のあり得べきストーリーを期待していた人はいささか肩すかしを食らうかもしれない。ただデビュー作「イマコシステム」も、非エロでやっていた連載でも、衝撃的なディテイルをはぎ取ったのちの主題は普遍的なボーイ・ミーツ・ガールだったわけで、その意味では今回たまたまサブヒロイン描写が増えたといっても根本のテーマは従来どおり「運命の恋人たちの物語(本作ならば「ひつじと幸太郎の物語」)」なのだろう。かような前提に立てばひつじ以外の3人の処置に不思議はないし、こうした結末にするしかないだろうと深く納得。個人的にも股間は4人平等に使わせてもらいつつ物語の支配者はひつじちゃんということで不満はないです。帯の訴求コピー「掲載の度に衝撃を呼んだ」ではないが、最後の2、3話くらいは読むたび驚天動地の展開が仕込まれてて心臓ドキドキちんこピキピキでたいそう楽しませてもらった。次作は抜き特化の短編集、その次はまた長編に挑戦との作者の言で、どちらもいまから大いに期待。

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