-久遠ミチヨシ「あなたと私は悪くない」竹書房 ISBN:9784812485910
話○ 抜○-△ 消大 総合○
報われない愛/裏切りの愛/いつわりの愛……それゆえに身体はいっそう燃えあがり短編全10本。マークなし。これまでのオーソドックスなエロコメから一転し恋愛のダークサイドをえぐるように描写する作者最新刊は通算13冊めにして本レーベルからの第3弾コミックスだ。なお先日レヴュったFCTと同様、先月末刊行のものを大幅に遅延しての評価記事ゆえひらにご容赦を。
この作家を知ったのはキャリア中途からだが、いちどその魅力のトリコとなってからは欠かすことなく新刊をデフォ買い。前単行本「あまあま*パフュメ」からおよそ半年ぶりとなる今作もむろん正式リリース美直後に入手していたのだけれど、こんなに取り上げるのが遅くなってしまって恐縮しきりである。なお竹書房物件としては2011年刊の「ヒメゴトマタニティ」以来3年ぶりのお目見えだ。
誰にでも受け入れられやすい華やかかつキャッチーな絵柄でもってキュートな巨乳ヒロインが黄色い楕円物件顔負けのハードプレイにいそしみガッツリ膣内射精されまくりというすばらしすぎる芸風がこの作家の最大のウリ。加えてこれまでの代表作ともいえる長尺シリーズ「絶対★は~れむ」ではヴァラエティ豊かな女の子連中に遠慮会釈なく種つけ三昧という全男子の夢実現なシチュで大いに楽しませてもらっている。しかしながらそのぶんストーリー展開は若干イージーゴーイングで……ともの足りなさを覚えているところへすかさずこちらを投入の如才なさはいい意味で商売人の鑑。
単行本の帯コピーで「取扱注意の劇薬短編集」と警告しているとおり、久遠ミチヨシの手になる能天気ラヴコメのみを摂取したい向きはこの先へ進まず即座に回れ右をオススメ。いままでどおりに、一途に慕ってくれる大量のおっぱいっ娘に囲まれてゴリゴリ気持ちよく中田氏のスムージーな夢物語に耽溺してたって誰もとがめるものはいないのだから。純愛スキーやらアンチNTRやらがこれだけ明白なアラートを無視してこの単行本へ踏みこんだあげく声高に批難するのはとんでもない筋違いだとあらかじめ釘を刺しておこう。
10代ラスト~20代なかばの特盛バストガールズ&レディースが抜きキャラを担当するのはこれまでの作品と同様な点。しかしながら彼女らが乗っかる物語は愛の脇道寄り道裏道へ全速力で進入の変格エロス一辺倒だ。かつての想い人と望まぬ状況で結ばれるもの、優しいフィアンセを横目に別の男と獣のごとく情欲を満たすもの、夫婦の確執へ取りこまれてゆくもの……登場する男女みなどこか欠落した/あるいはゆがんだ感情を抱え、その代償をいびつな肉体関係で埋めようとするのが本作の基本パターン。当初からおかしな部分を抱えたその愛はほとんどが明らかな破滅を迎えるか、あるいは将来のカタストロフを暗示する形で締めくくられることとなる。むろんコンビニ誌掲載作品ゆえ徹底的にアモラルな描写とはなっていないものの、どうにも不穏なやりとりが続きひりつくようなダイアローグが飛び交うさまに心ざわつくこと必至。
空虚な心をせめて肉欲で満たすべく、彼ら彼女らは互いに身体を絡めあい刹那的な行為に没頭する。夫や恋人を裏切り寝取り、あるいはたいして気にも掛けていない相手と体だけの関係を結び、もしくは傷つけるだけのセックスに溺れ、それゆえに情交の一瞬だけは激しく切なく燃えあがるのだ。ダイナミックな肢体をゴリゴリ酷使し雄大な2つの双丘をブリブリ揺らしながら激しく腰を振り続けるヒロインズの痴態に背徳感のスパイスもプラスされ、ただ快楽をむさぼるだけの交わりは果てなく続く。
慎太郎シール誌の厳しいレギュレイションにより性器附近は真っ白く覆われはするものの、掲載誌の方針変更で迷走しまくった前作に比べればこちらのエロ度にはブレなくそのぶん安心。そこへほどよくダーク風味を添加し背徳感マシマシで勃起喚起力もアップだ。あと副産物として男性陣の造形も無個性な和姦エロコメ主人公のそれではなくどこか影のある人間くさいキャラメイクになっておりグッド。久遠ミチヨシ漫画は和姦ハーレムばかりでどうも単調な……と食わず嫌いでいる貴方はぜひ本作を手にして蒙を啓いていただきたい。このたび収録のお話のなかでは、セックスレスの彼氏へ一途な愛を向けつつ身体は満たされず……のショート爆乳ヒロインが私的ツボ直撃な「凪吹いて」と、アスリートの夢絶たれた主人公がその原因たる後輩女子にサディスティックな感情をぶつける「想ひ潰ゆ」がことによござんした。
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