2011-11-13

今週の出張校正。

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-大見武士「月刊 哀川編集長(4)」少年画報社 ISBN:9784785937348
話○ 抜△ 消大 総合△

突然上京し掲載1発目からアンケート首位を勝ち取った天才肌の新人女性エロ漫画家が公私ともに巻き起こす旋風に主人公カップルも翻弄されっぱなし表題作長編6話(第22-27話、以下続刊)+番外編1本。マークなし。才色兼備完全無欠編集長・哀川さんとごく平凡なヒラ編集男子・今井くんとのベタ甘愛欲生活もますますお盛んの作者最新刊だ。
健康的でいながらほのかに色気のある独特のタッチで描かれるキュートなヒロインが喜怒哀楽をあらわにして躍動するさまが読者のささくれた心をほっこり癒してくれる独特の作風はまさしく慎太郎シール誌のために生まれてきたかのような才能。少年画報社以外にも前作「ハルコさんの新妻レシピ」を執筆したリイド社などヌルエロ系のレーベルを保有する版元から引っ張りだこなのもうなずける。
この人の手になるものでは最長不倒となるこのシリーズも、こちらで1巻2巻3巻と続けてレヴュらせてもらうとさすがに新しくつけ足すこともなくなってきた。4巻めともなればキャラクターも舞台設定も完全に固まって、主演女優/男優たる哀川さんや今井くんをはじめとする編集部一同が登場するだけで自然に物語は転がってゆく。そのぶん中途から作品世界に入っていくのにはハードルが高くなってきてはいるけれど、これは長尺ものの宿命でやむを得ないところ。
ルーティンだけで流すこともできるところにしかし今回は新要素を投入することでグッと話がおもしろく。前巻ラストでもチラッと顔見せした新人漫画家・梶原さんが今巻収録分から本格参戦。当初俺は目先を変えるためのエロ担当投入と読み違えたのだが、いまのところ我らが主人公への直截的手出しはなくもっぱら才気走った彼女が漫画家としてぐんぐん成長してゆくプロセスの方を前面に押し出している。このことにより抜き漫画としてより出版業界ものとしての色彩が濃厚になりストーリーの読みごたえが増した。
そうはいっても哀川さんのモデル顔負けなエロボディをフィーチャーした濡れ場をおざなりにしているわけではなく、お風呂Hや擬似SMプレイなどフェティッシュな行為の数々をやたらとウェッティな肢体描写でもってガツガツ供給だ。またガチ本番こそないものの、梶原さんもオナニーや妄想えっちなど間接的な形で自慰表明をサポートする。いろんな分泌物にまみれながらトロトロのイキ顔さらす彼女らの艶やかな女体を堪能しながら愚息も昇天。
個人的にはエロ漫画の重厚長大化についてあまりよいことだと思ってはいないのだが、今作のように抜き漫画的アプローチでなく編集者の成長物語へと進路変更するのならロングラン路線へ向かうのも充分アリだ。上手く舵取りできれば5巻でも10巻でも続けられそうな素材だけに今後の展開が楽しみなところ。ただ発刊ごとの短いスパンでレヴュるのにはそぐわなくなってきたので、次にこの漫画に言及するのは完結巻が出てからかなー。

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