-大見武士「月刊 哀川編集長(6)」少年画報社 ISBN:9784785950033
話○ 抜△ 消大 総合○
ないしょの同棲生活が思わぬハプニングで周囲にバレたもののそれを契機に仕事でもステップアップを果たしいよいよ恋にも決着をつけて表題作長編7話(第35-最終話、完結)。マークなし。デキる女だけど恋愛沙汰にはまるでウブな上司・相川さんとそんな彼女の指導鞭撻で男として成長を遂げる部下・今井くんのベタ甘ラヴ・アフェアもいよいよ今巻でグランドフィナーレとあいなった。
この作家の抜き物件としては去年9月のリイド社刊「みっくすパーティ」発売からおよそ半年ぶりのリリースで、「哀川編集長」ものとしては去年7月に出た前巻5巻以来となる。ところでこのシリーズについてはこれまでせっかく1巻/2巻/3巻/4巻と欠かさずレヴュっておきながら、こともあろうに5巻のみ記事書きをパスする大失態。進行がゆるやかになり新キャラを出してとさらなるロングラン展開へ入ったものと思いこみ最終刊までは取り上げないことにした矢先にこの6巻で完結だよ!
ちょっとだけ言い訳をさせてもらえば、本作担当でもある掲載誌「ヤングコミック」編集長が今春より別雑誌に異動するとのことで、それにより長期スパンで構想していた連載を畳む方向へ転換したのではと愚考している。5巻ラストで突如出てきた主人公の母親がキャラを掘り下げないうちに舞台から去ってしまったり、これまでなんどか登場していたライヴァル編集者との角突き合わせがやや消化不良ぎみに収束しているのは急に巻きが入ったからなのではなかろうか。
そうはいっても主人公カップルの初々しくもホットなラヴストーリーとエロ漫画雑誌編集ギョーカイ物語パートとの両輪を絶妙のバランスで進行させる手腕は最後まで衰えを見せず、オーラスの数話で恋にも仕事にもガッチリけじめをつけみごと大団円へとつなげてみせた。それなりに長いことこのお話を見守ってきた身としては最終話でのウェディング哀川さん&今井くんのお姿に思わず涙がツーッと。
お話主導型でエロシーンはおとなしめだった本作もさすがにシメのファックには力が入り、プロポーズからの熱烈なキスにはじまり延々身体を重ねあいながら妊娠覚悟のナマ出しフィニッシュに至るまでのロングランエロを最終コーナーの2話にまたがって展開する。これまでもさんざん2人のリア充ティックないちゃらぶを見せつけてこられたが今回はまさにその集大成で、純情可憐な哀川さんの艶姿を1巻まるごと堪能だ。
6巻にわたる長丁場にもかかわらず主人公カップル以外の濡れ場は皆無といういまどき特異な作品となったことについて、巻末のずいぶんと長い著者あとがきで作者の思いが綿々とつづられている。キャラに思い入れるあまり、哀川さんと今井くんの2人とも浮気などさせないとの強い決意があったとのこと。なるほど思い返せば幾人か出てきたサブヒロインはサーヴィスで裸を見せても絶対に本番突入しなかったし、当初NTR要員だと思っていた男性キャラはお仕事パートのみの登場にとどまったのはそういうことなのかと大いに納得。ただそのポリシーを引っぱり続けるのもおそらくこのくらいの長さが限界ギリギリで、その意味では編集長異動による風呂敷畳みは神の声だったのかも。
この人の持つ健康的なタッチとそれにふさわしい明朗快活なストーリーテリングがみごとに結実し、作者のここまでの代表作として名実ともにふさわしいできばえとなった。巻末のおまけ漫画によると次回作はどうも一般作品になってしまいそうな気配なのだが、可能ならばまた心もちんこも爽快になれるエロスなお話もドカドカ描いてもらいたいもの。
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